研究課題
酸性下で白金と同様の性能を有する白金フリー酸素還元触媒の開発は燃料電池の広範な応用に向けて欠かせない。ここでは酸化物ナノシートの化学的安定性、分子厚さ等を総合的に活用した新触媒の開発を目的とし、導電性と活性点コントロールを技術的目標とした。研究期間を通し、母材として酸化チタンナノシート、ペロブスカイトナノシート、酸化ルテニウムナノシート、さらには硫化モリブデンナノシートを追加検討し、カチオン、アニオンドーピングによる高性能触媒の開発を目指した。酸化チタンナノシートにおいては、Co/N共ドープにより導電性、強磁性等が増強された層状チタン酸化物が得られ、ナノシート化にも成功した。一方で触媒反応の溶媒として用いる硫酸条件下においては、Coの溶解がみられ、期待した触媒活性を得ることが出来なかった。ペロブスカイトついては、KCa2NaNb5O19に窒素ドープすることで、導電性が付与されることが明らかになった。一方で、ナノシートへと剥離することは困難であった。新たな素材として導電性を有するRuO2ナノシートへのCo, Feドープによるナノシート触媒の合成を行った。この場合、硫酸条件下でも安定なドープ型導電性ナノシートの合成に成功した。しかし、触媒活性については、ドープ無しサンプルの方が高活性を示した。構造評価からドープにより、金属状態のヘキサゴナル相から半導体のテトラゴナル相に変化することが明らかになり、結晶相変化に伴う局所構造、電子状態が触媒活性に大きな影響を与えることが示唆された。その他、酸化物以外の硫化モリブデンシートについても検討した。ナノシートの組成、物性を制御する技術を得ることができたが、高性能触媒活性に繋げるためには、更なる研究が必用である。
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