研究課題/領域番号 |
17K19188
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
門出 健次 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (40210207)
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研究分担者 |
村井 勇太 北海道大学, 先端生命科学研究院, 助教 (20707038)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | バイオマーカー / スフィンゴシン / セラミド / 異常取り込み / ライブラリー |
研究実績の概要 |
スフィンゴ脂質の基本構造であるスフィンゴシン骨格は、セリンとパルミトイルCoAから生合成される。ごく最近、生活習慣病等の患者から異常スフィンゴ脂質が発見された。これは、セリンの代わりにアラニンとパルミトイルCoAから生合成されたものであり、強い細胞毒性を有すると共に、生活習慣病の鋭敏なバイオマーカーになる可能性が期待されている。スフィンゴシン類の生合成系には、セリン、アラニン、グリシン以外のアミノ酸も取り込まれる可能性があると考え、標品としての対応する変異スフィンゴシンを化学合成した。昨年度は、L-フェニルアラニン、L-アラニン、L-トリプトファン、L-ロイシンからのスフィンゴシン様化合物に成功した。本年度は、L-システイン、L-スレオニンを実施した。システインについてはチオール基の独自の反応性のため、保護基の導入を念頭においた。そのため、2位のアミノ基を利用した5員環形成による分子内保護法を当初実施した。従来法の応用によりHorner-Wadsworth-Emmons 反応により増炭反応には成功したが、還元反応が良好に進行せず、別ルートによる合成を試みた。チオール基の特殊な反応性による合成問題を解決するために、比較的後半にチオール基を導入することとした。スフィンゴシンの合成を基本として進め、1位の水酸基に脱離基を導入した後、チオ酢酸で置換反応を行った。その後、加水分解、脱保護により目的の化合物を得ることに成功した。また。L-スレオニンを原料として、従来法によりスレオニン部分を頭部に有する変異スフィンゴシンの合成に成功した。将来的なセラミド類ライブラリー化を念頭に、アミノ基のアシル化を実施した。通常のセリン、アラニン、システイン、ロイシン、フェニルアラニンタイプについて、それぞれ、有効と思われるアシル基を導入し、頭部の違うセラミドの合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進展している。 困難が予想されたL-システインを出発原料とした頭部アミノ酸置換型スフィンゴシンの合成に成功した。また、これらの変異スフィンゴシンのアシル化を開始することができた。また、学会発表等の外部発信も実施、担当学生が優秀発表賞を受賞するなど、良好な応答をえている。
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今後の研究の推進方策 |
頭部アミノ酸置換型スフィンゴシンの多様化 セラミドはスフィンゴ脂質群の合成・代謝における中心的な脂質であり、細胞増殖、アポトーシスを制御する脂質メディエーター等の働きをする。デオキシスフィンゴ脂質類が非常に強い細胞毒性を有することから、これら頭部置換型スフィンゴシン類のセラミド誘導体は、さまざまな生理活性を有することが期待できる。これまでに合成が完了したL-フェニルアラニン、L-アラニン、L-トリプトファン、L-ロイシン、L-システイン、L-スレオニンの頭部アミノ酸置換型スフィンゴシン塩基をアシル化することにより、セラミドライブラリーの構築を試みる。アシル化は、特殊樹脂にアシル化剤を固定化させ、固相上での活性エステルを構築することで実施する。多検体処理のためのアシル化活性化樹脂の構築を行うとともに、反応条件等の検討を行う。アシル化されたセラミド群は、頭部が異なるため、その生物活性の違いに興味がもてる。既に、該当研究室で立ち上げているスフィンゴミエリン合成酵素の阻害能の測定を実施し、構造とその活性の議論を行う。
SPTへの基質の取り込み実験 セリンパルミトイル転移酵素(SPT)は、セリンとパルミトイルCoAからケトスフィンガニンを合成するスフィンゴシン合成の最初のステップを触媒する重要酵素である。ごく最近、細菌由来のSPTを用いた実験を行っている研究グループとの共同研究をスタートさせた。そのため、この細菌由来のSPTの基質特異性を物質レベルで調査することとした。まず、鏡像体であるD-セリンの取り込み実験を実施する。D-セリンが取り込まれた場合、生成するケトスフィンガニンの立体化学がどうなるかは、全く不明である。両鏡像体のケトスフィンガニンを合成後、蛍光基の導入とキラルHPLCによるキラル分析法の確立を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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