細胞小器官の機能不全は、老化や疾患の原因となる。なかでもミトコンドリアの機能不全は、細胞内のATP産生減少に加え、活性酸素の過剰産生によって、遺伝子や生体分子を傷害する。神経変性疾患の一部は、遺伝的理由もしくは老化によるミトコンドリア機能不全と関連が深い。一例として国内に13万人以上の患者があるとされるパーキンソン病を挙げることができる。 機能不全ミトコンドリアを選択的に分解除去できる手法を確立できれば、従来根本的治療法のなかった神経変性疾患の治療に大きく貢献できると考えて研究を実施した。 本年度は、研究実施計画にもとづき、培養細胞を用いた評価系の検討を行った。ミトコンドリア傷害を再現するin vitro系として、脱共役剤やロテノンなどを用いた。ミトコンドリア形状の変化や細胞死(アポトーシス)について、適切な実験条件を設定した。これらとは別に、ダウン症由来の繊維芽細胞を入手し、ミトコンドリアが高度に断片化していることを確認した。ダウン症由来細胞のミトコンドリア断片化は、先行研究からメトホルミンなどの化合物によって改善が見られることがわかっている。次年度以降は、これら薬剤をポジティブコントロールとして、本研究課題の化合物の効果を評価していく予定である。 また、機能不全ミトコンドリアを除去するための新規化合物の合成にも着手し、一部を特許出願した。 ミトコンドリア以外の細胞小器官を、本研究のアイデアで分解除去できるか確認するために、小胞体などに集積させるための各種ハロタグプラスミドの構築も行った。
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