研究課題/領域番号 |
17K19194
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
湯浅 英哉 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90261156)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
キーワード | 光免疫療法 / アナジー誘導 / ガラクトシルセラミド |
研究実績の概要 |
免疫抑制剤として注目されているα-ガラクトシルセラミド(GalCer)は、元々その免疫賦活性が注目され免疫抗癌薬剤として開発されたが、頻回投与でアナジー誘導(免疫不応答)が起こり、抗癌活性が消失してしまう。本研究は、GalCerの免疫賦活性を改良し、抗癌剤として再開発を行うことを目的とする。つまり、光照射部局所的に活性が発現するようにGalCerの構造を改変し、アナジー誘導を回避して免疫賦活性を持続できるようにする。本研究は、光線免疫療法という新しい治療分野の先駆けとなる。また、局所免疫活性化⇒サイトカイン産生量の時系列モニターにより、免疫療法におけるアナジー誘導の機構解明に迫る。糖脂質GalCerは抗原提示細胞上のCD1dによって抗原提示される。ガラクトースがNKT細胞のレセプター(TCR)に認識されると、インターフェロン(IFN-γ)が放出され、免疫賦活性を示すため抗癌剤として開発が進められたが、頻回投与するとアナジー誘導が起こり、逆に免疫抑制に転じてしまうため、他研究機関では開発が断念されている。本研究では、光異性化により構造変化するアゾベンゼン(AzoPh)基を持つ誘導体(GalCerAzoPh)を合成し、光照射により患部局所のみ免疫賦活性化できる手法を開発する。本年度は、Cer部分の合成法開発を中心に行い、また、Gal部分のアナログ合成も行った。天然型GalCerにおいてGalはCer部分とグリコシド結合しているが、ガラクトシダーゼなどの作用により加水分解が進行する可能性がある。そこで、加水分解しないアナログを合成することにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cer部分の合成は、市販のフィトスフィンゴシンのアミノ基をアジド基に変換し、2級水酸基をイソプロピリデン基で保護することにより合成した。ガラクトースアナログは、メチルガラクトピラノシドの6位をトリチル化、3,4位をイソプロピリデン化、2位をトリフルオロメチルスルホニル化したのち環縮合を行い、1位の還元を行い水酸基とした。この水酸基に脱離基を導入したのち、Cerと求核置換反応によるカップリングを行いGalCerアナログ前駆体を合成した。アジド基をアミノ基に還元後、脂肪酸との間でアミド結合を形成させ、脱保護を行うことによりGalCerアナログの合成を行うことができた。以上の合成経路は、一部をわずかに変更するだけで、様々な誘導体合成に導けるため、以後の検討における合成的な基盤を構築したことになる。よって、総合的に研究開発が順調に進んでいると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で合成基盤が整った中間体に対して、アゾベンゼンを含む種々の長さの脂肪酸を反応させて光異性化によりコンフォメーションが変化するGalCerアナログの合成を行う。これらのGalCerアナログに対して、蛍光ラベルしたCd1dを結合させ、TCRを持つNKT細胞のフローサイトメトリーを行うことにより、合成GalCerがどれだけTCRに結合しやすいかがわかる。また、この結果を踏まえた上でNKT細胞で放出されるサイトカインの種類と量を検証する。さらに、良い結果が得られた誘導体については、マウスを用いたin vivo実験でGalCerの抗腫瘍効果などを検証する。これらの生物学的実験は東大医科研の渡会浩志准教授との共同研究によって行う。
|