免疫抑制剤として注目されているα-ガラクトシルセラミド(αGalCer)は、元々その免疫賦活性が注目され免疫抗癌薬剤として開発されたが、頻回投与でアナジー誘導(免疫不応答)が起こり、抗癌活性が消失してしまう。本研究は、αGalCerの免疫賦活性を改良し、抗癌剤として再開発を行うことを目的とする。具体的には、光照射部局所的に活性が発現するようにαGalCerの構造を改変し、アナジー誘導を回避して免疫賦活性を持続できるようにする。本研究は、光線免疫療法という新しい治療分野の先駆けとなる。また、局所免疫活性化⇒サイトカイン産生量の時系列モニターにより、免疫療法におけるアナジー誘導の機構解明に迫る。糖脂質αGalCerは抗原提示細胞上のCD1dによって抗原提示される。ガラクトースがNKT細胞のレセプター(TCR)に認識されると、インターフェロン(IFN-γ)が放出され、免疫賦活性を示すため抗癌剤として開発が進められたが、頻回投与するとアナジー誘導が起こり、逆に免疫抑制に転じてしまうため、他研究機関では開発が断念されている。本研究では、光異性化により構造変化するアゾベンゼン(AzoPh)基を持つ誘導体(αGalCerAzoPh)を合成し、光照射により患部局所のみ免疫賦活性化できる手法を開発する。本年度は、昨年度達成したαGalCerAzoPhの合成と、光照射によるCD1dとTCRへの結合活性が向上についてデータを精査することにより、Bioorg. Med. Chem. Lett.に論文化することができた。さらに、光照射による活性差が十分でないと判断し、よりかさ高いAzoPh誘導体の設計を行い、その合成を開始した。
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