研究課題
本研究の目的は、「人工翻訳後修飾」を小分子化合物で実現化することである。mRNAから翻訳されたタンパク質は、細胞内で様々な翻訳後修飾を受けて機能調節されている。例えば、タンパク質機能に重要なチロシンのリン酸化やリシンのアセチル化がよく知られている。このような翻訳後修飾は、細胞内では酵素によってなされている。本研究では、同じ効果を小分子化合物で生み出すことに挑戦する。これまでの試薬は、いずれも「デザイン」された試薬であり、現時点での知識を活用したものである。本研究では、細胞内の特定のタンパク質に特異的に共有結合して機能を改変する化合物を網羅的に「発見」する。さらに、発見された化合物がどのようにしてタンパク質の機能を改変するのか、そのメカニズムを解明する。これによって、新たな知識が生産できると期待できる。生命の根幹をなす翻訳後修飾を小分子化合物で人工的に行う「人工翻訳後修飾」を開拓する。平成29年度は、主にスクリーニングを行った。まず、マイルドな親電子反応性基を備えた1061個の化合物を行った。活性判別蛍光プローブを加えて反応させ、SDS-PAGEで分離し、蛍光バンドを検出したところ、多くの化合物・タンパク質のペアを発見した。その標的タンパク質を解析し、五つの化合物・タンパク質のペアを同定した。また、同様にして、反応性天然物の83個をスクリーニングした。その結果、1つの化合物・タンパク質のペアを同定した。
2: おおむね順調に進展している
予定されたスクリーニングは終了し、予定通り化合物・タンパク質ペアの同定に成功した。反応性天然物については、当初の予定より少ない数のペアしか発見できなかった。標的タンパク質同定の作業に手間取った。
平成30年度は、平成29年度のスクリーニング結果を受けて、同定した化合物・タンパク質ペアヒット化合物の解析を行う。解析には、リコンビナントタンパク質や変異型タンパク質を駆使し、有機化学、分析化学、生化学、分子生物学、細胞生物学の手法を組み合わせる。以下の研究を進める。(1)特異性の評価をおこなう。特異性の高い化合物のみ以下の解析を行う。(2)質量分析により反応しているアミノ酸を特定する。(3)酵素活性への影響(反応速度、基質特異性、補酵素への影響)を詳細に調べる。(4)複合体の結晶構造解析と酵素活性変調の分子メカニズムを解析する。
標的タンパク質の同定に時間がかかり、未執行額が生じた。該当未執行額については、次年度において実験試薬や研究成果発表旅費に使用予定である。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1074/jbc.RA118.002316
Chemical Communications
巻: 54 ページ: 1355~1358
10.1039/C7CC08686E
http://www.scl.kyoto-u.ac.jp/~uesugi/