現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①数千のCTGリピート配列が形成する構造を再現するために、30回のCUG繰り返し配列を有するRNAを、数ナノメートルの間隔で配置する。RNA分子の数、距離を制御して一分子ずつ配置する。この配置を実現するために、DNAナノ構造体によって「足場」を設計した。一辺60 nmの空孔を持つDNAナノ構造体(杉山ら、J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 1592など)をDNAオリガミ法によって構築し、アガロースゲル電気泳動と高速AFMによって構造を確認した。 ②さまざまな繰り返し数に相当するCUGリピートRNAを集積させ、それらへのMBNL1タンパク質の結合を高速AFMを用いてRNP凝集体構造および動的な凝集体形成過程を観察するために、作製した「足場」にDNAカテナンを導入し、アガロースゲル電気泳動と高速AFMによって、カテナン構造を確認した。 これら①、②の結果から、一辺60 nmの空孔を持つDNAナノ構造体は、DNAトポロジー構造の形成とその可視化を可能にする事が明らかになった。また、空孔内に橋渡しした一本鎖DNAとともに、空孔周辺部に一本鎖DNAを導入することにより、30回のCUG繰り返し配列を有するRNAを多数配置出来る可能性が実証できた。
|
今後の研究の推進方策 |
①DMPK遺伝子で正常なCTGの繰り返しとみなされる30回CUG配列が繰り返したRNA[(CUG)30RNA]を基本単位として合成する。30回から1000回以上のCUGリピートを細胞外で再現するため、DNAナノ構造体上にCUG30RNA を1~50分子配置する。CUG30RNAの数・空間配置を制御したCUGリピートRNA集積場において、それぞれのRNA集積状態(=リピート数)でMBNL1タンパク質が形成する複合体(凝集体)の大きさ・形状を、高速AFMを用いた観察によって明らかにする。また、複合体および凝集体の動的な形態変化を経時的に観察することにより、凝集体形成の速度論的な知見を得る。 さらに、CUGリピートRNA結合分子(中谷ら、Nature Chem. Biol. 2005, 1, 39; ZimmermanらJ. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 14180)と凝集体との結合を観測する。 ②MBNL1と凝集体を形成するCUGリピートRNA集積場から形成されるRNP凝集体に特異的に結合するペプチドをファージディスプレイ法(Science 1985, 228, 1315)によって探索する。得られたペプチドを蛍光色素で修飾し、細胞内でCUGリピートRNAとMBNL1が形成する凝集体を可視化する検出ツールとしての機能を検証する。
|