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2017 年度 実施状況報告書

一細胞代謝を可視化する蛍光プローブの開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K19203
研究機関九州大学

研究代表者

王子田 彰夫  九州大学, 薬学研究院, 教授 (10343328)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワード蛍光プローブ / 代謝 / がん
研究実績の概要

細胞代謝経路を可視化する蛍光プローブの開発を目指して、蛍光センシング機構の鍵となるチオエステルの分子内環化反応について検討を進めた。モデル化合物としてクマリンを蛍光団として持つチオエステル誘導体を合成し、中性水溶液中において環化反応を検討したところ有機溶媒混合系では10分程度で素早い環化反応が進行することを蛍光スペクトル測定により明らかとした。一方で完全水溶液中での環化反応は遅く数時間オーダーであった。また、アルキルチオエステルの細胞内環境での安定性について検討を行った。その結果、アルキルチオエステルのグルタチオンとのチオエステル交換反応は数時間オーダーと比較的遅いが、生細胞存在下では速やかに加水分解を受けてカルボン酸へと変換されることが明らかとなった。この結果は、細胞内のエステラーゼやチオエステラーゼによる影響であると考えられる。
目標とするクエン酸回路や解糖系に対する蛍光プローブの検討に先立って、これまでに先行して研究を進めている脂肪酸のベータ酸化を可視化するクマリン型の蛍光プローブをデザインし、ベータ酸化の進行に伴って生成するチオエステルの分子内環化反応が進行するかどうかの検討を行った。その結果、クマリン型の蛍光プローブはベータ酸化の基質となるが、分子内環化反応は進行せずチオエステルの加水分解されたカルボン酸体を与えるのみであった。以上の結果をうけて、チオエステルの分子内環化反応速度を加速できる分子デザインに基づいた新たなプローブ合成をさらに進めている。
一方で細胞代謝反応に関与する様々な酵素反応の可視化を可能とするカルボン酸の分子内環化反応をセンシング機構と有する蛍光プローブの開発を進めた。検討の結果、カルボン酸形成により瞬時に環化反応を起こし発光型の蛍光色素を遊離する新しい構造ユニットを見出すことに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

チオエステルの分子内環化反応が水中で進行し、蛍光増強を伴う蛍光センシング機構として機能できることを明らかにできた。クエン酸回路や解糖系に対する蛍光プローブの開発は着手できていないが、ベータ酸化に対する蛍光プローブ開発において一定の成果が得られたことは、期間内における十分な成果であるといえる。また、カルボン酸の分子内環化反応を利用した新しい蛍光センシング機構を見出せたことは、今後の細胞代謝の蛍光センシングにつながる成果である。

今後の研究の推進方策

現在進めているチオエステルの分子内環化反応を促進できる新しい分子を合成し、その有用性について検証を行う。望む結果が得られた場合には、まず、脂肪酸のベータ酸化をイメージングできる蛍光プローブの開発を先行して進める。その後にクエン酸回路や解糖系に対する蛍光プローブの開発を行うこととする。カルボン酸の分子内環化反応を利用した新しい蛍光センシングは、実際の酵素反応の検出に向けた検討を進める。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Reversible Ratiometric Detection of Highly Reactive Hydropersulfides Using a FRET-Based Dual Emission Fluorescent Probe2017

    • 著者名/発表者名
      R. Kawagoe, I. Takashima, S. Uchinomiya, A. Ojida
    • 雑誌名

      Chemical Sciences

      巻: 8 ページ: 1134-1140

    • DOI

      10.1039/c6sc03856e

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Fluorescence Sensing of Inorganic Phosphate and Pyrophosphate Using Small Molecular Sensors and Their Applications2017

    • 著者名/発表者名
      J. Wongkongkatep, A. Ojida. I. Hamachi
    • 雑誌名

      Topics in Current Chemistry

      巻: 375 ページ: 1-33

    • DOI

      10.1007/s41061-017-0120-0

    • 査読あり
  • [学会発表] カルボン酸の分子内環化反応を利用した蛍光センシングシステムの開発と酵素反応検出への応用2018

    • 著者名/発表者名
      中村範章, 内之宮祥平, 王子田彰夫
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会
  • [学会発表] Development of a fluorescent probe for live-cell imaging of fatty acid beta oxidation2018

    • 著者名/発表者名
      Shohei Uchinomiya, Ryosuke Kawagoe, Mark Weber, Mari Sakamoto, Akio Ojida
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会
  • [学会発表] 新しいセンシング機構を組み込んだ蛍光プローブのデザインと応用2017

    • 著者名/発表者名
      王子田彰夫
    • 学会等名
      第30回九州分析化学若手の会春の講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 脂肪酸β酸化を検出するための基質型蛍光プローブの開発2017

    • 著者名/発表者名
      内之宮祥平、川越亮介、中村範章、王子田彰夫
    • 学会等名
      第11回バイオ関連化学シンポジウム
  • [学会発表] 新しい蛍光プローブのデザインと応用2017

    • 著者名/発表者名
      王子田彰夫
    • 学会等名
      2nd Symposium on New Trends of Nano-and Bio-Materials Design in Supramolecular Chemistry
  • [学会発表] カルボン酸の自発的脱離反応を利用した蛍光センシングシステムの開発2017

    • 著者名/発表者名
      中村範章、内之宮祥平、王子田彰夫
    • 学会等名
      第5回バイオ関連化学シンポジウム若手フォーラム
  • [学会発表] カルボン酸の自発的脱離反応を利用した蛍光センシングシステムの開発2017

    • 著者名/発表者名
      中村範章、内之宮祥平、王子田彰夫
    • 学会等名
      第11回バイオ関連化学シンポジウム
  • [学会発表] カルボン酸の自発的脱離反応を利用した蛍光センシングシステムの開発2017

    • 著者名/発表者名
      中村範章、内之宮祥平、王子田彰夫
    • 学会等名
      第34回日本薬学会九州支部大会
  • [備考] 九州大学薬学研究院生体分析化学分野ホームページ

    • URL

      http://bunseki.phar.kyushu-u.ac.jp

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公開日: 2018-12-17  

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