研究課題
本研究では、1回膜貫通型の細胞表面受容体である上皮成長因子受容体(Epidermal growth factor receptor; EGFR)の活性化機構を解明するために、細胞外領 域断片に対して、標識を導入した膜貫通ペプチドを連結する実験系の構築に取り組んだ。本年度の研究では、所属機関に導入されたMALDI-TOF MS装置を利用して、反応産物の分析を行った。これまでの研究では、主に電気泳動法を利用することで、EGFR細胞外領域断片に標識用のペプチドをライゲーション反応によって連結できるかを調べてきた。ウェスタンブロッティング法によって検出することで単なるバンドシフトのみでなく、エピトープが付加されたことも確認してきたが、何らかの副反応による産物が得られたという可能性を電気泳動では否定できない。そこで、質量分析を行うことで、反応前後の質量差が計算値と一致するかを調べた。特に本研究であつかうEGFR細胞外領域断片は分子量が100 kDa近くに及ぶ巨大なタンパク質であり、また糖鎖修飾を受けることから、均一なサンプルが得られにくいという問題点があった。そこで、糖転移酵素欠損株を用いることで、N型糖鎖の均一化を図った上で測定を行った。その結果、ブロードなピークながら、100 kDa付近にピークが観測された。また、反応産物については複数のピークが重なった状態のスペクトルが得られたため、正確な分子量は判定できなかったが、反応に伴って10 kDa程度の質量変化が起きていることが確認できた。また、本年度は他の受容体についてのライゲーション反応の可能性を探るべく、性状解析にも取り組み、pH等の溶液条件による構造変化の検出にも取り組んだ。
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