研究課題
R3Cリボザイムは、基質結合部位、グリップ、ハンマーという領域から構成されており(73ヌクレオチド)、ここから部分的領域欠損を行って大きく活性を失った縮小型R3Cリボザイム変異体とハンマーループ部分に相補的な配列をもつ別の変異体を共存させた際に、リガーゼ活性が著しく上昇するが、今年度は、まずこのメカニズムを明らかにするために、変異体を用いたリガーゼ活性測定を中心に研究を推進した。その結果、変異体R3Cと共通のループ部分を持ち、ステムは全て異なる配列を持つヘアピン状RNA(35 ヌクレオチド)を、相補的ループを持つ元の変異体R3Cと混合しても、リガーゼ活性は上昇しないことが分かった。一方、2つの変異体R3Cの片方のステム領域に変異を加えたRNAを複数作製し、もう一方の変異体R3Cと混合すると、ステム領域の配列や長さによって、リガーゼ活性が大きく変化することを発見した。最終的に、このトランスの系での活性上昇に必要な分子は、ループ間相互作用を含むヘアピン状のRNAにまで、縮小できることが明らかになったが、ループ間相互作用を含むヘアピン状のRNAであっても、tRNAの原始形態であるミニヘリックスでは、リガーゼ活性上昇をもたらさなかったことから、ループの配列だけでなく、ステム領域の配列も影響を及ぼしており、特に、連結部付近の微細な構造の違いがリガーゼ活性に重要であることが示唆された。これらの成果に関して、学術論文や学会発表を行った。
3: やや遅れている
逆翻訳という究極の目標は極めて次元の高いものであるので、そこから見ると、進展はやや遅れているものの、トランス系でのR3Cリガーゼリボザイムの活性上昇に必要な最小要素に近いところまで限定できたことは、今後の展開が開けてきている。
先年度に明らかにしたR3Cリガーゼリボザイムの、トランスの系での活性上昇に必要なループ間相互作用を含むヘアピン状のRNAに焦点を当て、連結部付近の構造変異体を作製することによって、リガーゼ活性に重要なステム領域の配列を明らかにしていくことで、ペプチドへの導入(逆翻訳)の道筋を作っていきたい。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) 図書 (1件)
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