昨年度設計した脂質2重膜を取り込むための口の字型DNAオリガミ構造体の調製を行った。10 nm角の疎水空間を有する構造体を実際に作製し、原子間力顕微鏡(AFM)により目的通りの構造が作製されていることを確認した。さらに、脂質2重膜との相互作用についても検討した。 また、DNAオリガミ構造体内の疎水空間へのゲスト取り込みに関して、その低い収率を改善するための手法についても検討した。金ナノ粒子へのDNA修飾に際して、金ナノ粒子とチオール修飾DNAの溶液を凍結させることにより、金ナノ粒子へのDNA分子の導入効率を飛躍的に高めたという既報の論文を参考に、10 nm角のゲスト取り込み用の空間を有するDNAオリガミ構造体への金ナノ粒子の取り込みにおいても溶液の凍結を試みた。その結果、従来考えられていたのとは異なり、DNAオリガミ構造体の溶液を凍結しても、その構造には悪影響がでないことがはじめて明らかとなるとともに、DNAオリガミ構造体への金ナノ粒子の取り込み効率についても、100倍以上の加速効果が得られることがわかった。 さらに、DNAオリガミ構造体のゲスト取り込み空間に、シクロデキストリンロタキサンを固定化することにも成功した。高速AFMで観察した結果、シクロデキストリン分子そのものを観察することはできなかったものの、シクロデキストリンに導入したビオチンにストレプトアビジンタンパクを結合させることにより、ナノ空間内にタンパク分子を選択的に取り込み、その運動をリアルタイムに観察することができた。
|