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2017 年度 実施状況報告書

結晶性多糖表面を動きながら連続的に分解する酸化還元型酵素を創る

研究課題

研究課題/領域番号 17K19213
研究機関大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)

研究代表者

飯野 亮太  大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (70403003)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワードタンパク質工学 / 1分子計測
研究実績の概要

結晶性多糖は、地球上に大量に存在し燃料に変換可能なバイオマスである。しかしながらその物理的・化学的安定性からオリゴ糖への分解が容易でなく、有効利用されていない。このため、常温常圧の穏やかな条件で結晶性多糖を分解する糖質分解酵素が基礎・応用の両面で研究されている。中でもLytic Polysaccharide Monooxygenase(LPMO)は、最も高い活性を示す酵素として注目されている。本研究では、天然型よりも優れた非天然型LPMOを創造し、結晶性多糖の有効利用につなげることを目的とする。
LPMOによる結晶性多糖の分解には、酸素が共基質として必須であるとこれまでは考えられてきた(Kracher D Science 2016)。この知見に従って本研究でも条件検討を行い、分解活性が最大となる条件を見つけ出すことができた。
しかしながら本研究を進める過程で、LPMOの分解活性に必要な共基質は酸素ではなく過酸化水素であるという、これまでの根底を覆す報告がなされた(Bissaro B Nat Chem Biol 2017)。このため、これまでの予備実験の結果をすべて白紙に戻して追試を行った。その結果、酸素存在下よりも過酸化水素存在下の方が確かに高い活性が得られることを確認した。さらに、高濃度の過酸化水素存在下ではLPMOの失活が起き長時間の計測を行えないことが判明した。そこで、グルコースオキシダーゼを用いて適性濃度の過酸化水素を連続的に供給する反応系を構築し、LPMOが長時間高い活性を保持できる条件を確立した。
また、LPMOの1分子イメージングを行うための蛍光色素導入部位の検討を行った。その結果、活性をほぼ完全に保持した状態で定量的な標識を行うことができる部位の同定に成功した。さらに、多量体LPMOのデザインと作製も行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

LPMOによる結晶性多糖の分解に必要な共基質は酸素ではなく過酸化水素であるという、これまでの根底を覆す報告がなされたため(Bissaro B Nat Chem Biol 2017)、追試と新たな反応条件の検討に想定外の時間を費やした。
しかしながら反応条件を詳細に検討することにより、LPMOによる結晶性多糖の分解活性が最大となる条件を確立することができた。また、グルコースオキシダーゼを用いて適性濃度の過酸化水素を連続的に供給する反応系を構築することで、LPMOが高い活性を長時間安定的に保持できる条件を確立することもできた。これにより、安定した1分子蛍光イメージングも可能になると期待できる。
さらに、活性をほぼ完全に保持した状態でLPMOに定量的な蛍光標識を行うことができる部位の同定に成功した。また、多量体LPMOのデザインと作製にも成功した。
以上より、おおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

今後はまず生化学的な手法を用い、新たに確立した反応条件下での単量体LPMOおよび多量体LPMOの結晶性多糖分解活性の比較を行う。さらに、単量体LPMOおよび多量体LPMOの1分子蛍光イメージングを行い、結合、解離、表面拡散等の反応素過程の速度定数を定量計測して比較を行う。
また、ヘテロ二量体LPMOの作製と生化学計測を行う。細菌Streptomyces coelicolor由来のセルロース分解型LPMOであるScLPMO10B、ScLPMO10Cは、単量体同士を混合すると分解活性が増大する「シナジー効果」が報告されている(Forsberg Z PNAS 2014)。そこでこれらをヘテロ二量体化する事でシナジー効果の増強を試みる。さらに、ヘテロ二量体LPMOの1分子蛍光イメージングを行い、速度定数の定量計測して単量体やホモ二量体と比較する。
ヘテロ二量体のシナジー効果の増強が確認できた際には、さらに異なる種類のLPMOを加えたヘテロ三量体、四量体の作製も試みる。得られたヘテロ多量体は、生化学計測で活性を単量体やヘテロ二量体と比較する。増大がみられた場合には1分子蛍光観察で反応機構を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

LPMOによる結晶性多糖の分解に必要な共基質は酸素ではなく過酸化水素であるという、これまでの根底を覆す報告がなされたため(Bissaro B Nat Chem Biol 2017)、追試と新たな反応条件の検討に想定外の時間を費やした。このため、LPMOの1分子蛍光イメージングに費やす経費に未使用分が生じた。翌年度分として請求した助成金は、単量体LPMOおよび多量体LPMOの1分子蛍光イメージングを引き続き行う経費に用いる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Large-Scale Femtoliter Droplet Array for Single Cell Efflux Assay of Bacteria2018

    • 著者名/発表者名
      Iino Ryota、Sakakihara Shouichi、Matsumoto Yoshimi、Nishino Kunihiko
    • 雑誌名

      Methods in Molecular Biology

      巻: 1700 ページ: 331~341

    • DOI

      10.1007/978-1-4939-7454-2_18

  • [学会発表] 機動分子科学:生体分子、人工分子を超えて2017

    • 著者名/発表者名
      飯野亮太
    • 学会等名
      第17回蛋白質科学会年会
    • 招待講演
  • [備考] 自然科学研究機構 分子科学研究所 飯野グループ

    • URL

      https://groups.ims.ac.jp/organization/iino_g/index.html

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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