研究課題/領域番号 |
17K19215
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
宮崎 雅雄 岩手大学, 農学部, 准教授 (20392144)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 香料 / GC-MS / オミッション / におい / 酸化物半導体センサ |
研究実績の概要 |
我々の身近に存在する飲食品や化粧品、洗剤、消臭剤等には、様々な香料が含まれている。香料は、主に、花や草木、果物等の天然物が発する香気に似せて作られている。天然物が発する香気は様々な成分が混ざり合って形成されるので複合臭とも言われる。複合臭を形成する成分の種類や構成比の違いで多種多様なにおいが形成される。しかし複合臭を構成している成分の全てがそのにおいの形成に寄与しているわけではなく、寄与する割合が非常に小さいものや、全く寄与していない成分も存在する。よって香料の製造現場では、天然物が発する複合臭に含まれる成分の中から、におい形成に重要な成分だけを効率的に同定して人工香料を作りたいという要望が常に生じている。本研究ではこの様な要望に応える次世代のにおい分析法の開発に挑戦する。これを達成できれば、香料の開発のみならず、例えば製品の品質管理の指標となる異臭の原因物質の特定や消臭剤の開発に重要な悪臭物質の特定などにも応用でき、我々の身近に存在する様々なにおい問題を解決する革新的なツールになると期待できる。そこで本研究では機器分析を最大限に活用した全自動オミッション装置の開発に挑む。具体的には、平成29年度に香料の構成成分の同定や標品調達を全く必要としないオミッション試料作成装置の開発を行った。GCのカラムで分離した成分を2流路に分岐するスイッチングユニットが市販されている。通常これは、一方を質量分析計に、もう一方を別の検出器に接続して使う。本研究では、スイッチングデバイスをオミッション試料の作成に使用する。即ちスイッチングデバイスを装着したGCを準備して、試料の構成成分をGCで分離後、除去したい成分のみMS側に送り、その他は試料袋に回収して特定成分を除いた複合臭を再構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究でオミッション試料を全自動で作製できる装置の開発がほぼ終了した。
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今後の研究の推進方策 |
酸化物半導体センサを利用して、オミッション試料を評価できるシステムを構築する。10種程度の成分で構成され、既に従来のオミッション法で各成分の寄与度が分かっている人工香料で基準臭とオミッション試料を作り、化合物に対する反応性が異なる10個の金属酸化物半導体センサ(半導体が揮発成分と接触した時に生じる抵抗値変化が数値化される)を有したにおい識別装置(FF- 2020、島津製作所)で測定する。各試料に対して10個のセンサ値が得られるので、この値を使い10次元上に1本のベクトルを描出する。そして基準臭とオミッション試料のベクトル間の角度を内積の公式から算出する。基準臭とオミッション試料の角度が大きい順に並べれば、どの成分を除去した時に複合臭のにおいが大きく変わるか、におい形成に寄与する成分を数値で評価できる。理論的には、においがしない成分3種を除去したオミッション試料のベクトルの向きは、基準臭のベクトルの向きとほぼ重なり、ベクトル間の角度が小さいと予想される。基準臭とオミッション試料間の角度は、官能評価のにおいの近さ度合いと比例すると予想するが、センサと嗅覚のにおい識別原理は全く違うので異なることも考えられる。その場合、まず各成分の検知閾値濃度を加えた場合の角度変化に比べてどのくらい角度が開いたか比較して解決策を探る。
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