特徴的な香気物質を特定する手法として、オミッション法がある。これは複合臭中の単一化合物の寄与を測る方法でありとても有用である。しかし、この方法には、化合物が同定できない場合や標品が入手できないと元のにおいを再現できないといった問題があった。そこで、本研究では、オミッション法を自動化した装置の開発を目指した。通常のGC/MSに、カラムで分離した化合物を2流路に振り分けられるスイッチングユニットを据え付け、目的の化合物だけをMSへ送り、その他を回収装置に送れば、目的の化合物だけを除去できる。これにより、従来オミッション試料作製に必要であった化合物の同定や標品の入手を必要としないオミッション試料作製が可能となった。本年度は、昨年度までに作成した試作機の改良と柑橘精油を用いたアプリケーション開発を目的として実験を行った。まず、これまでの問題点の1つであった手動でのオミッション試料作製を改善するため、GCカラム出口にガス回収バック用オートサンプラーを取付けたことで、最大12個の匂い袋に自動で試料作製することが可能となった。次に、化合物をMSへ除去した際、FASで回収した試料には、除去した化合物が含まれていないかをユズ精油を用いて検証した。この結果から、80~90%の化合物がMSへ送られ、除去された化合物のほとんどは回収試料にはないことが分かった。加えて、ユズ精油のオミッション試料を官能評価した結果、Linaloolがユズ精油に重要であるという結果を得ることが出来た。
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