食品機能性の研究が国内外で広域に展開されている。食品成分の消化管からの吸収と体内での代謝の理解は極めて重要であり、申請者は様々な食品成分の分析法を開発し、吸収代謝を解明して、生理作用発現との関係評価を進めてきた。その中で、申請者らはごく最近、米の糠に特徴的に含まれるγ-オリザノールをマウスに与えると、従来の学説とは異なり、γ-オリザノールはそのままの形で吸収され、体内に十分量存在することを見出した。さらに、通常の市販固形食で飼育しているだけのマウス血中にもγ-オリザノールが存在することを確認した。したがって、常時γ-オリザノールが体内に存在していると言え、γ-オリザノールには「ビタミン様物質」という概念は全くなかったものの、その確固たる活性・薬理作用を踏まえると、γ-オリザノールのビタミン様活性が新たに想定され得る。そこで本研究課題「米特徴成分γ-オリザノールの吸収代謝解明から導く新ビタミン様成分の可能性創成」では、γ-オリザノールの吸収代謝の解明とともに、γ-オリザノールのビタミン様活性の解明を目指した。そのために、血液に加えて臓器におけるγ-オリザノールの解析を実施するための一連の分析法(抽出法、精製法、LC-MS/MS条件)を構築し、さらに本法を用いてγ-オリザノールを含む食餌を与えたマウスの様々な血液と臓器を解析し、これらにγ-オリザノールが確かにそのままの形で存在することを証明した。さらに吸収代謝の解明に向けて、リンパカニュレーション試験を実施し、γ-オリザノールが腸管吸収を経て体内に移行することを明らかにした。また、これまでに米にのみ含まれていると考えられていたγ-オリザノール分子種が大麦にも含まれていることを見出し、このことは我々が日常的にγ-オリザノールを摂取している可能性を示唆した。
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