研究課題/領域番号 |
17K19224
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
木矢 剛智 金沢大学, 生命理工学系, 准教授 (90532309)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
キーワード | ミツバチ / ショウジョウバエ / Hr38 / エクジソン / ステロイドホルモン / 長期記憶 / 植物ステロイド / 神経活動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、昆虫の行動は植物ステロイドホルモンを介した記憶増強によって植物側からも操作されている、という大胆な仮説を検証するものである。従来、昆虫の訪花行動では、昆虫が自由意思によって好みの花を訪れることが前提条件として考えられてきた。そのうえで、植物は昆虫の好みの蜜や匂いを用意することで花粉の運搬を昆虫に依存し、時には共進化をするという、両者の関係が考えられてきた。しかし、本研究者の研究より、植物が合成するステロイドホルモンが昆虫の行動を制御している可能性を見出してきた。これは従来考えられてきた植物が昆虫に従属する関係とは逆に、植物が昆虫の行動を操作する機構を進化的に獲得してきた可能性を示すものである。本研究は、訪花性昆虫のモデルとしてミツバチの働き蜂を用い、実験室内外における学習や行動を測定することで、植物ステロイドホルモンがミツバチの行動に与える影響を調べ、上記の仮説を検討することを目的としている。また植物ステロイドホルモンが昆虫の脳機能に影響を与える現象の分子メカニズムを、ショウジョウバエを用いた遺伝学的解析により明らかにすることも目的としている。 今年度は、 ①これまでに検討した植物ステロイドホルモンの投与濃度が非常に高かったので、濃度を下げていった場合の検討を行った。 ②ミツバチを用いた場合では遺伝子機能解析が困難であることから、ショウジョウバエを用い遺伝子のノックダウン解析や遺伝子発現の解析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の仮説の通り、植物ステロイドホルモンがミツバチにおいて脳高次機能に重要な作用をすることを見出したのみならず、ショウジョウバエにおいても同様の機能があることを見出した。あくまで仮説の範囲を越えないが、本研究者の発見は訪花性昆虫のみならず多くの昆虫種において、植物ステロイドホルモンが脳機能に影響を与える可能性を示すものである。すなわち、植物と昆虫の共進化がどのような背景によって起きたのかということについて、新たな視座からの仮説を提唱することにつながる可能性が見出されたという点で、当初の研究計画以上に大きく進展しているものであると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、植物ステロイドホルモンが昆虫の脳機能に影響を与える分子メカニズムの解明を行うと共に、本研究による新規なシグナル経路や進化の仮説を世界にいち早く提唱すべく、論文の出版を第一の目標として本研究課題を進めてゆきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の遂行において多少の残額が生じたが、額は小さく、研究の順調な遂行に伴う変動の範囲内であると考えられる。次年度は最終年度となるので、特に論文としての出版を主たる課題として適切な助成金の執行を行っていく予定である。
|