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2018 年度 実施状況報告書

新規寿命制御シグナル:硫黄枯渇によるリボソーム抑制と寿命延長機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K19227
研究機関名古屋大学

研究代表者

饗場 浩文  名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (60211687)

研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2020-03-31
キーワード分裂酵母 / 寿命
研究実績の概要

申請者は、分裂酵母をモデルに細胞寿命の制御機構を解明することを目指している。
今年度は、カロリー制限とは独立に分裂酵母の寿命延長を引き起こすことが知られている化合物Tschimganine(TMN)に注目した。TMNは分裂酵母の寿命延長を引き起こすが、濃度次第でその生育を阻害する。この特性を利用してスクリーニングを行い、TMNに耐性を示す変異株を取得した。この変異株の原因遺伝子は、分裂酵母の寿命制御にも関わるストレス応答MAP kinase(MAPK)経路中の因子であるSty1を含む、様々なタンパク質の核外排出に働くエクスポーチンタンパク質をコードするcrm1であった。これら因子とTMNの関係を解析した結果、TMNによる寿命延長はSty1に大きく関わることが分かった。さらに、TMN処理によってSty1が核に移行すること、Sty1下流のストレス応答遺伝子発現量が上昇することが確認され、TMN処理によってSty1経路が活性化されていることを見出した。以上より、TMNはSty1経路を活性化することで寿命延長を引き起こしていると考察した。
また、TMNより優れた類縁体の探索を目的としたスクリーニングを行った。その結果、分裂酵母への生育を阻害することなく寿命を延長する2つのTMN類縁体を発見し、それぞれα-hibitakanine、β-hibitakanineと命名した。これらの類縁体もCRと独立に寿命を延長すること、寿命延長効果がSty1経路に依存することが示されたことから、出発化合物であるTMNと同じ寿命延長経路に作用していることが考えられた。さらに、α-hibitakanineは分裂酵母だけでなく出芽酵母の寿命延長も引き起こしたことから、TMN類縁体が作用する寿命延長経路は幅広い生物種で保存されている可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

分裂酵母をモデルに、経時寿命を延長する化合物を2種類見出し,それぞれ構造-活性相関に関する知見が得られた。1つについては、ターゲット同定に向けて,化合物に対して非感受性を示す変異の取得・同定と作用機構の解明が進んでいる。

今後の研究の推進方策

当初の計画に従い、健康長寿創薬の展開に向けてその基盤となる分裂酵母の寿命延長化合物の同定と作用機構の解析を進める。新たな寿命制御シグナルとして見出した硫黄欠乏については、細胞内応答、特にリボソームの生合成機構との関連を明らかにすべく解析を進める。

次年度使用額が生じた理由

研究計画の変更に伴い使用計画を変更した。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] Tschimganine and its derivatives extend the chronological life span of yeast via activation of the Sty1 pathway2018

    • 著者名/発表者名
      Hibi Takahide、Ohtsuka Hokuto、Shimasaki Takafumi、Inui Shougo、Shibuya Masatoshi、Tatsukawa Hideki、Kanie Kei、Yamamoto Yoshihiko、Aiba Hirofumi
    • 雑誌名

      Genes to Cells

      巻: 23 ページ: 620~637

    • DOI

      10.1111/gtc.12604

  • [学会発表] 分裂酵母DNA複製チェックポイント因子Cds1のリン酸化による転写因子Mei4を介した相同組換え開始の制御機構2018

    • 著者名/発表者名
      小菅清二、山田貴富、村上優子、饗場浩文、村上浩士
    • 学会等名
      酵母遺伝学フォーラム第51回研究報告会
  • [学会発表] アミノ酸枯渇による寿命延長と分裂酵母の経時寿命延長因子Ecl1 Familyの解析2018

    • 著者名/発表者名
      佐藤哲平、加藤敬典、島崎嵩史、大塚北斗、饗場浩文
    • 学会等名
      日本農芸化学会中部支部第183回例会
  • [学会発表] 分裂酵母における硫黄枯渇と細胞応答2018

    • 著者名/発表者名
      筒井優、服部允赳、島崎嵩史、大塚北斗、饗場浩文
    • 学会等名
      日本農芸化学会中部支部第183回例会
  • [学会発表] 分裂酵母の細胞壁リモデリングタンパク質Gas1の変異株が長寿命表現型を示す機構の解明2018

    • 著者名/発表者名
      榎村千尋、今井優希、坪内聡、島崎嵩史、大塚北斗、井原邦夫、饗場浩文
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] アミノ酸枯渇条件下における分裂酵母の経時寿命延長因子Ecl1 family遺伝子の解析2018

    • 著者名/発表者名
      加藤敬典、佐藤哲平、島崎嵩史、大塚北斗、饗場浩文
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] Tschimganineによる酵母の経時寿命延長の機構解析2018

    • 著者名/発表者名
      持田尚宏、日比駿秀、大塚北斗、島崎嵩史、乾祥吾、澁谷正俊、山本芳彦、饗場浩文
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 経時寿命を延長する分裂酵母変異株のスクリーニングと新規寿命関連因子の同定2018

    • 著者名/発表者名
      松井滉太朗、岡本啓佑、島崎嵩史、大塚北斗、井原邦夫、饗場浩文
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 硫黄枯渇に対する細胞応答の解析2018

    • 著者名/発表者名
      筒井優、服部允赳、島崎嵩史、大塚北斗、饗場浩文
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 分裂酵母DNA複製チェックポイントキナーゼCds1による転写因子Mei4のリン酸化を介した減数分裂相同組換えの制御機構2018

    • 著者名/発表者名
      小菅清二、山田貴富、饗場浩文、村上優子、村上浩士
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会

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公開日: 2019-12-27  

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