研究課題
硫黄は、メチオニンやシステイン等に見出され、必須栄養素の1つである。本研究では、硫黄枯渇下における分裂酵母の表現型として経時寿命の延長及び細胞の小型化を見出し、これらが経時寿命延長因子であるEcl1ファミリー遺伝子に依存することを示した。今年度は、硫黄枯渇応答の1つである細胞の小型化に注目し、その解明を目的とした。まず、分裂酵母の一遺伝子欠損株セットを用いて硫黄枯渇時の細胞の小型化に関わる遺伝子のスクリーニングを行なった。野生株では硫黄枯渇による細胞の小型化が起こるのに対し、Ecl1ファミリー遺伝子欠損株ではその小型化は見られない。スクリーニングでは、Ecl1ファミリー遺伝子欠損株と同様に硫黄枯渇時に細胞の小型化が起こらない遺伝子欠損株を探索し、199の遺伝子の欠損株を取得した。次に、硫黄枯渇時にEcl1ファミリー遺伝子がどのように小型化を引き起こしているのかを探るため、この199の遺伝子からEcl1の下流で働く遺伝子の探索を試みた。そのため2次スクリーニングとして、ecl1+を高発現するプラスミドをこれら199の遺伝子欠損株に導入し形態観察を行なった。この際、これら遺伝子欠損株においてその欠損した遺伝子がecl1+の下流で機能する場合、ecl1+を高発現しても、そのシグナルは欠損株の対応遺伝子産物に伝わらないため、細胞の小型化が起こらないと予想した。2次スクリーニングの結果、オートファジー、細胞周期制御に関与する遺伝子の欠損株を複数取得した。以上のことから、Ecl1ファミリー遺伝子は硫黄枯渇に応答して、オートファジーや細胞周期制御を介して細胞の小型化を誘導している可能性を予想した。Ecl1ファミリー遺伝子は経時寿命を延長する機能を持つことから、Ecl1ファミリー遺伝子が寿命制御とオートファジー、細胞周期をつなぐ重要な役割をしていると考え今後解析を進める予定である。
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Mol. Genet. Genomics
巻: 294 ページ: 1499-1509
10.1007/s00438-019-01592-6