研究実績の概要 |
活性のあるプローブを用いた、花成誘導化合物の標的探索を試みた。本研究室の別の研究プロジェクトで確立した、化合物標的探索のプロトコール(Uehara et al., PNAS 2019, Saito et al., Plant Direct 2019)、あるいはその改良した方法論でアプローチしているものの、化合物の標的とみなせるタンパク質の決定には至っていない。 化合物処理後の遺伝子発現プロファイルも化合物の作用機序の決定へ向けた重要な情報となる。実際にこのアプローチによって、我々は別の化合物の作用機序の解明を達成した(Ono et al., Plant Cell Physiol. 2019)。この方法を本研究に適用したが、本化合物の短時間の処理で変化する遺伝子は見出すことができなかった。しかし、化合物を1日処理すると花成ホルモン(FT)遺伝子の発現が上昇するため、化合物処理1日目, 2日目で遺伝子の発現を解析した。植物を短日条件あるいは長日条件で生育させ、化合物を処理し、1日目, 2日目のRNAサンプルを3時間おきに回収した。このRNAをショートリードシークエンサーによるRNAseq解析に供与した。期待通りFT遺伝子は、短日条件で化合物によって誘導された。また長日条件でも化合物はFT遺伝子の発現を上昇させた。化合物処理によって発現に影響をうける遺伝子群を抽出すると、これらの遺伝子群は日長依存的に誘導される遺伝子群であることが判明した。したがって、本化合物は花成以外の日長依存的生理反応を網羅的に明らかにする働きがあることが示唆された。
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