引き続き、研究開始時に発見されていた花成誘導活性のあるプローブを用いた花成誘導化合物の標的生体分子の同定を進めているものの、化合物の標的となるタンパク質の決定には至っていない。 しかしながら、化合物処理後の遺伝子発現プロファイリングから、この化合物はある時計遺伝子に対して特に影響を与えることが判明した。この結果から、我々は、この時計遺伝子の発現に大きく影響を与える時計タンパク質が、化合物の作用経路として重要な役割を果たすという作業仮説を導いた。仮説を検証するために、in vivoでこの時計タンパク質の量や局在などを解析できる形質転換シロイヌナズナを作成した。作成した形質転換シロイヌナズナは、予想通りの分子量サイズのタグが付加した時計タンパク質が発現しており、またこのタンパクの過発現により時計が撹乱していた。したがって、この株では機能的な時計タンパク質が発現していた、すなわち実験に使えるものであることが分かった。 この適切な形質転換体に、化合物を処理したのちに、目的の時計タンパク質の存在量をウエスタンブロッティングで解析したところ、顕著な量的な変動があることが分かった。この量的な変化は、タンパク分解系である26Sプロテアソームの阻害剤の処理によって、大幅に緩和された。したがって、本化合物の作用経路として、この時計タンパク質の分解の制御が浮かび上がってきた。このように、遺伝子発現プロファイリングとその後の詳細な解析によって、化合物の作用機序の主要経路が明らかとなったと考えている。
|