研究課題/領域番号 |
17K19230
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
井上 雅恵 (今野雅恵) 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (60459732)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 光遺伝学 / 微生物型ロドプシン / 膜電位制御 / 植物培養細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、微生物型ロドプシンの光駆動イオン輸送能を利用し、植物の細胞膜電位を光で制御する系を確立することを目的としている。平成30年度は、光依存的な膜電位制御に適した微生物型ロドプシン分子の選抜を目的として、昨年度に構築したシロイヌナズナ培養細胞T87株への一過的遺伝子導入・タンパク質発現系を用いて6種類の微生物型ロドプシンタンパク質を一過的に発現させ、膜電位蛍光指示薬DiBAC4(3)を用いた光依存的膜電位変化を検出した。各微生物型ロドプシンは蛍光タンパク質venusをC末端に融合した融合タンパク質として発現させ、細胞内での発現部位が可視化できるようにした。C末端側に融合させたVenusの蛍光によりタンパク質局在を検出した結果、外向きナトリウムポンプKR2、カチオンチャネルGtCCR4、アニオンチャネルGtACR1で原形質膜への局在が確認された。また、膜電位指示薬DiBAC4(3)を用いて、530nmの光照射に伴う膜電位変化を検出したところ、KR2およびGtCCR4で、光依存的な膜電位の変化が観測された。 さらに、電気生理測定を用いた膜電位制御の詳細や、光合成活性等の細胞の生理特性に及ぼす影響を評価する目的で、アグロバクテリウム法を用いて微生物型ロドプシンを恒常的に発現するT87細胞の形質転換体作製を行い、GtCCR4を除く5種の微生物型ロドプシン分子について形質転換体の取得に成功した。現在、パッチクランプ法の適用など、膜電位制御の詳細を測定するための方法について検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に構築したT87細胞の一過的発現系を用いて、少なくとも2種の微生物型ロドプシン分子で光依存的な膜電位発現制御が可能であることを示すことができた。また、アグロバクテリウム法を用いて恒常的に微生物型ロドプシンを発現する形質転換体を取得できたことで、作製した膜電位制御系が実際に細胞の生理活性を制御できるかどうかを詳細に評価することができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に作製した恒常的発現系について電気生理学的手法を適用し、光依存的な膜電位制御の詳細な特性を調べる。また、初年度に本課題で購入した酸素電極を用いて全細胞での光化学系IIの活性測定・アミノ酸組成の分析などと行い、作製した膜電位制御系で細胞の生理学的特性が変化するかどうかについての議論を深める。 一方で、細胞内での発現場所に関しては、細胞内に凝集してしまう分子も見られているため、引き続き膜電位制御に有効な微生物型ロドプシン分子の選抜を行うとともに。細胞内局在を改善するための遺伝子コンストラクトを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加のための旅費としての使用を予定していたが、参加した2度の国際学会においていずれも旅費に対する補助が得られたため、差額が生じた。差額については、主に消耗品費と学会参加費に使用する予定である。
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