近年、天然物医薬品探索の重要性・有用性が再認識されつつあるが、化学構造的にも生物活性的にも多様性を有する新規化合物群のさらなる創出・開発が希求されている。そこで本研究課題では、昨年度に引き続き、下記の2つの研究項目を設定し研究を遂行した。
項目1. Streptomyces sp. HEK616とTsukamurella pulmonsis TP-B0596の複合培養におけるクリプティック遺伝子活性化機構の解析:Streptomyces sp. HEK616の詳細なドラフトゲノム解析を行い、新規抗真菌物質5aTHQs類および抗生物質streptoaminals類の生合成に関与する15遺伝子(ORF1-6及びStmA-I)からなる生合成遺伝子クラスターを同定した。Streptomyces lividans TK23を宿主として異種発現を行い、単独培養及びT. Pulmonis TP0596との複合培養を行うことで、streptoaminals類及び5aTHQs類の産生を確認し、両者が同一のPKSによって生合成されること、加えて、新規のII型PKSによって生合成されることを明らかにした。
項目2. 希少放線菌Saccharothrix sp. A1506が生産するsaccharothriolides類の生合成における不安定中間体の実証:Saccharothriolides類の生産培地におけるトリプトファン添加の有無等による不安定中間体のLC-MSによる検出条件の検討・確立、単離精製条件の検討等を行った結果、不安定中間体presaccharothriolide Xを見出しその化学構造を明らかにした。さらに、PDSS法(precursor-directed in situ synthesis法)により複数の新規saccharothriolides類の創製を行った。 一方、saccharothriolide Bが生理的条件下、presaccharothriolide Xに変換することを明らかにし、saccharothriolide Bに含まれる2-aminophenolが生物活性物質のプロドラッグ化に有益であることを実証した。
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