研究課題
平成31年度は,まず,平成30年度の実績を踏まえて,さらにD,Lアミノ酸キラルプロファイリング法の性能向上を志向したメソッド開発を実施した.昨年同様,光学分割カラムを用いてHILIC系(アセトニトリル/トリフルオロ酢酸/エタノール)の均一溶媒系によるクロマトグラフィーにタンデム四重極質量分析系を連結したシステムを基本とした.今年度は,(+)型カラムと(-)型カラムの2本のカラムにバルブスイッチングシステムを適用することにより,(+)型,(-)型の2本のカラムの分析を連続的に行うシステムを構築した.本方式により,分析のバッチ差に基づく系統誤差が減じられ,よりバラつきの少ない高精度分析系を構築できた.実サンプル分析については,昨年度の長期貯蔵貴醸酒中のD-アミノ酸分析結果を踏まえて,同じくD-アミノ酸を多く含有すると言われている生もと仕込みの清酒をサンプルとしてD-アミノ酸プロファイルを実施した.生もと仕込みは乳酸菌を関与させる伝統的な清酒醸造方法であり,乳酸菌の産生すると思われるD-アミノ酸が含まれ,それらのプロファイルが生もと仕込み清酒の独特の呈味に関与する可能性が示唆されてきた.生もと系清酒の特徴を理解するために,対象試験サンプルとして酵母仕込み清酒も同じ分析に供した.サンプルをメタノール-クロロフォルム抽出系により徐タンパク,脱脂し,D-Alanine(d4)を内部標準物質としたサンプルの分析を実施した.LC-MS分析に加えてGC-MS分析も実施した.得られたデータ行列を多変量解析に供した結果,生もと仕込み清酒と酵母仕込み清酒の差異を捉えることに成功した.また,官能試験の結果と合わせて考察したところ,複数のD-アミノ酸が生もと仕込み清酒の呈味の強さに相関を有することを発見した.
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Journal of Bioscience and Bioengineering
巻: 印刷中につき未定 ページ: 印刷中につき未定
10.1016/j.jbiosc.2020.02.017
Food Science and Technology Research
巻: 25 ページ: 775~784
https://doi.org/10.3136/fstr.25.775