研究課題/領域番号 |
17K19236
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡辺 肇 大阪大学, 工学研究科, 教授 (80212322)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | ミジンコ / ビテロジェニン / GFPタンパク質 |
研究実績の概要 |
本研究では、遺伝子工学的手法を用いて卵黄タンパク質を有用タンパク質と入れ替え、卵内に有用タンパク質を蓄積させるシステムの開発を目的とする。 対象生物としては飼育と繁殖が迅速かつ簡便に行えるミジンコを用いる。ミジンコは微小なものの高密度で飼育できることから、卵黄タンパク質を有用タンパク質と置き換えることができれば容易に大量の目的タンパク質を得られる。エサは炭酸固定としても注目されている緑藻を用いることから、「炭酸固定をしながら水から有用タンパク質を作る」ことが可能になる。 (1) このために細胞外へタンパク質を分泌するのに必要な分泌シグナルペプチドと GFP を融合させた「分泌型 GFP 融合遺伝子」を挿入したプラスミドを作製した。 (2) この作製したプラスミド DNA を一過的に卵に導入し、融合遺伝子産物の局在を蛍光顕微鏡で観察し、細胞外にGFPタンパク質が分泌されていることを確認した。並行してマイクロキャピラリーを用いてヘモリンフを採取し、蛍光の測定およびウエスタン法などで、実際にヘモリンフ中に分泌される融合タンパク質を確認した。 (3)この「分泌型 GFP 融合遺伝子」にさらにビテロジェニン受容体と相互作用するドメインを融合させ、 「ビテロジェニン受容体結合 GFP 遺伝子」を作製した。 (4) 作製した「ビテロジェニン受容体結合 GFP 融合遺伝子」をミジンコ卵に顕微注入するこことよより、その融合遺伝子を発現させることに成功した。一過的な解析においては、融合遺伝子を注入後、約1週間培養をつづけ、育房に産み付けられた卵を回収したところ、蛍光顕微鏡観察によってマーカーとしている GFP タンパク質の卵への蓄積を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
震災の影響で水槽が被害を受けたほか、その後のミジンコの生育も正常になるのに時間を要したことから、予定よりもやや遅れている。しかしその後、順調に回復していることから、予定通りに本研究課題を遂行できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
「ビテロジェニン受容体結合型GFP遺伝子」をCRISPR/Cas9 を用いてビテロジェニン遺伝子の下流に挿入する。 また実際にビテロジェニン遺伝子を組換えタンパク質産生遺伝子と置換するための遺伝子操作を行う。 具体的には下記の操作を予定している。 (1)「ビテロジェニン受容体結合型 GFP 遺伝子」をもつトランスジェニック系統を用い、ビテロジェニン遺伝子の両端にloxP配列を挿入する。挿入に際してはCRSPR/Cas9 を用いる。 (2) (1)の loxP の系統と並行して Cre リコンビナーゼ発現系を作製する。ヒートショック遺伝子の制御領域下に Cre リコンビナーゼ遺伝子を導入したトランスジェニックミジンコを作製する。(3) (1)の loxP 系統および(2)の Cre 系統を掛け合わせ Cre-loxP が機能する系統を作製する。ミジンコは通常単為生殖で増殖するためメスしか存在しないが、ミジンコを幼若ホルモン処理することでオスを作ることができ交配が可能に なる。この系統を用いて実際にヒートショック処理をすることにより、「ビテロジェニン受容体結合型 GFP 遺伝子」が卵黄遺伝子のかわりに卵内に蓄積されることを確認する。(4) 実際に作製した HSP70A(プロモーター)-Cre 遺伝子 と「ビテロジェニン受容体結合型 GFP遺伝子」をもつ系統を用いて、ヒートショックにより卵内に GFP 遺伝子産物が蓄積されることを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
震災の影響により、水槽が被害を受けたため。 研究材料であるミジンコの飼育が適切に行えなくなり、また研究の使用に可能耐えうるような順調に飼育されたミジンコの調整がが可能となるまでに時間を要した。
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