研究課題
被子植物の一部では雌雄の株に分かれる種が存在する。このような種は雌雄異株と呼ばれており、その性は動物と同様に性染色体によって制御されている。アスパラガスはXY型の性染色体をもつ単子葉類の雌雄異株植物であり、性染色体がXYのとき雄株、XXのとき雌株となる。アスパラガスの性はY染色体の有無で決定されるため、Y染色体上には雄ずいの発達を促進する遺伝子と雌ずいの発達を抑制する遺伝子の2つの性決定遺伝子がコードされていると予測されていた。私達はこれまでにY染色体にコードされる雄ずい特異的発現遺伝子MSE1を性決定遺伝子候補として発見している。本年度は雌ずい側の性決定遺伝子を探索するために、ゲノム解析を行った。これまでにゲノムサイズの約70倍のイルミナゲノムシーケンスを用いたアセンブルデータが作製されており、519 Mbのアセンブルデータが作製された。アセンブルデータにない残りの部分はリピートシーケンスである。このアセンブルデータに雌雄のイルミナゲノムシーケンスリード約32 Gbをマッピングして、雄株のリードが雌株の5倍以上マッピングされているスカフォールド3,211個を得た。さらにこれらにスカフォールドに対し雌雄のつぼみ由来RNAリード11 Gbをマッピングして、雄株由来のRNAが雌株より5倍以上マッピングされた44個のスカフォールドを得た。これらのスカフォールドに対して座乗する遺伝子のアノテーションを行い、トランスポゾンとアノテーションの付かなかったものを除いた10個の候補遺伝子を得た。ゲノムPCRをしてY染色体にコードされるかを確認したところ、2つの遺伝子がY染色体上に存在しており、1つはMSE1であった。もう1つの遺伝子はDUF247ドメインをもつ機能未知の遺伝子であったが、最近になってアメリカと中国の共同研究グループから雌ずい側の性決定遺伝子であることが報告された。
2: おおむね順調に進展している
今年度はアスパラガスのゲノム解析から雌ずい側の性決定遺伝子候補を見つけることが出来た。同じ遺伝子が他の研究グループから報告されてしまったが、計画に記載した遺伝子の発現パターンやクサスギカズラ属における分布等は調べられていないため、計画通りに研究を進められる。
今後はアスパラガスの雌ずい側性決定遺伝子候補であるDUF247遺伝子の発現パターンやクサスギカズラ属における保存性等を研究計画に基づき進めていく予定である。また、アスパラガスの全ゲノム配列が公開されたため、Y染色体上にある他の遺伝子についても調べていく予定である。
昨年度は研究室を奈良先端科学技術大学院大学から東京大学へと移したため、研究室の実験環境を整えるのに時間が掛かってしまった。成果はほぼ予定通りでているが、予定していた実験をすべて行うことはできなかった。現在では実験環境が整い研究をできるようになっているため、研究計画に従って実験を進めていく予定である。
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