研究課題/領域番号 |
17K19239
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
石川 孝博 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (60285385)
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研究分担者 |
田井 章博 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (70284081)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | アスコルビン酸プローブ / プロテオーム / シロイヌナズナ / アスコルビン酸結合タンパク質 |
研究実績の概要 |
新規アスコルビン酸プローブの検討に関して、研究分担者の田井博士のグループにおいて同プローブをアガロースビーズに固定化して作製したアフィニティーカラムの評価を実施した。マウスの各組織由来の抽出液を用いて検討した結果、特に酸化型CytCに対して特異的結合性を有することが認められ、新規プローブによりアフィニティーカラムの有効性が実証された。MOEによるドッキングシュミレーションによるCytCのアスコルビン酸結合部位の予測結果も踏まえて、得られた成果をまとめ学術雑誌Analystに報告した。次に、実施計画にしたがって同プローブによるアフィニティーカラムを活用し、植物アスコルビン酸結合タンパク質の探索を試みた。シロイヌナズナアスコルビン酸欠乏変異体vtc2を材料に、葉、花、果実からの各粗タンパク質抽出液について、透析による内在性アスコルビン酸の最適な除去条件を詳細に検討した後、アフィニティーカラムに供した。得られた各タンパク質溶出画分について、nanoLC/MSによるプロテオーム解析を実施し、45タンパク質を植物アスコルビン酸結合タンパク質候補としてリスト化した。このうち、葉において検出された29タンパク質中、約半数の12タンパク質が葉緑体局在であり、葉緑体にアスコルビン酸が高濃度含まれている事実を反映している結果となっった。またアスコルビン酸との結合性が強く予測されるタンパク質を優先に、一部組換え体タンパク質の作製を済ませ、アスコルビン酸との結合性について生化学的な評価を進めており、植物におけるアスコルビン酸の新規機能の解明が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
作製したアスコルビン酸プローブに関する有用性の評価が予想以上にはかどり、学術論文として報告出来たこと、および同アフィニティーカラムとプロテオーム解析により、植物(シロイヌナズナ)組織より多数のアスコルビン酸結合タンパク質候補を得、一部はすでに機能評価まで進めることができていることを根拠に、当初の計画以上に進展していると自己判断した。
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今後の研究の推進方策 |
アフィニティーカラムに関しては、非特異的タンパク質によるバックグラウンドの低減が改良点であるため、プローブの支持体を半田ビーズ等に変更することで特異性の改善を進める。またシロイヌナズナより得られたアスコルビン酸結合タンパク質候補については引続き組換え体タンパク質の作製と結合性の評価を進めるとともに、強い結合性を示す機能未知タンパク質については遺伝子破壊株を入手し、表現型および必要に応じてトランスクリプトーム、プロテオーム等オミクス解析を実施して、その生理的役割について考察を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:合成したアスコルビン酸プローブによるアフィニティーカラムの作製が当初予測していた試行錯誤なく順調に進行したこと、およびnanoLC-MSによるプロテオーム解析も当初予定した分析回数よりも効率的に実施できたため、節約できた予算について次年度使用額として繰り越すこととした。 使用計画:繰り越し金と併せて次年度は、アフィニティーカラムの作製に際してより効率化が期待できる半田ビーズ等高価な支持体の導入を予定している。またアスコルビン酸結合候補タンパク質については、プロテオーム解析結果より、当初の予想よりも多くの組換え体タンパク質の作製の必要がありそのための作製費および結合能評価に必要な14C表h式アスコルビン酸購入に充てることを計画している。
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