青枯病菌は、世界規模で猛威を振るう植物病原細菌である。本病はナス科を中心に、200種以上の植物に急激な萎凋・枯死を引き起こす恐ろしいものであるが、有効な化学防除法は確立されていない難防除植物病害である。現在のところ、罹った場合はなす術がないのが実情である。さらに厄介なことに、一度、青枯病菌が発生した土壌中には、菌が多く生息し続けるため、再び青枯病菌が発生するという高いリスクが伴う。しかしこれまでに、青枯病菌を含め多くの細菌が土壌に潜伏し続ける分子メカニズムはほとんど分かっていない。本申請研究では、青枯病菌の土壌潜伏機構を分子レベルで解明し、ナス科植物を本病から守るための化 学的基盤を作り上げる。平成30年度では、クオラムセンシング制御下にあるralstonin類のさらなる単離・構造決定および生合成機構解明、化学合成を研究項目として進めた。新規類縁体の単離・構造決定、詳細な生合成欠損株の解析などをまとめた論文が現在リバイズ中である。生合成機構解明を目指し、生合成遺伝子クラスターのクローニング、クラスター外酵素の関与の可能性を検証した。さらに、ralstonin類の全合成達成を目指し、単純化アナログ化合物の固相合成法について大部分の反応を達成することができた。
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