ビフィズス菌属の基準株全てについてゲノム情報を取得し、そこに含まれる糖転移酵素および糖加水分解酵素の機能と種類をCAZyデータベースをもとに網羅的に調査した。糖関連酵素の分布と宿主となる動物の食餌との関係を調査したところ,植物食や雑食など多様な多糖類を食餌に含む宿主由来のビフィズス菌が持つ糖関連遺伝子は多様であるのに対し、単純な糖類を栄養源とする動物由来のビフィズス菌は遺伝子数が少ないことを明らかにした。またその関係は、宿主となる動物の進化系統とは異なる(つまり宿主と一緒に進化してきたわけではない)ことも明らかにした。同様の解析を複数種の宿主と共生できるビフィズス菌について実施したところ,同一種の内側では食餌に依存した遺伝子変化を見出せなかった。つまり糖代謝関連の酵素は他の遺伝子群に比べて入れ替わりが激しいものの、その変化は種を超えて類似するほどではなかった。 ピロリ菌については世界各地で見出された菌株のゲノム構成を比較した。アジアやオーストラリアなど地域に特徴的なゲノムリアレンジメントの位置と、繰り返し配列や可動性遺伝因子との関係を調査した。その結果、繰り返し配列との顕著な相関はみられないこと、菌株特異的なリアレンジメントは可動性遺伝因子との相関が強いことを見出した。よく保存されたリアレンジメントも発生時は可動性遺伝因子が原因であったかもしれない。しかしそうした要素の痕跡が薄くなり更なるリアレンジメントを起こさなくなったために幅広く保存される可能性が示唆された。
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