研究課題/領域番号 |
17K19259
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
房 相佑 宇都宮大学, 農学部, 教授 (50302443)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 合成生物学 / ゲノムの自己・非自己 / 人工生物出 / DH系統 / 植物生殖 |
研究実績の概要 |
全遺伝子がホモ接合である純系は,育種や研究において重要である.理想的な純系であるDouble Haploid (DH) 系統は,高い重要性を有するにもかかわらず,DH系統の育成法にさまざまな問題点があり利用機会が限定的である.申請者らはこれまでの研究成果から,アブラナ科機能性新型野菜『香味菜』を用いた交配によって,従来よりも極めて簡便に任意のアブラナ科品種の DH 系統を育成できる手法を開発しつつある.初年度の研究では,これまで近交系や純系の育成が困難であったアブラナ科作物を対象に,DH 系統を簡便に育成する新手法を実用化に向けて開発・整備することを目的に,49系統のB. rapa を種子親に利用して, 『香味菜』を花粉親にした交配を行った.その結果, 29組合せにおいてF1植物が得られ,ミズナを種子親にした場合が最も好適であり,カブを種子親にした場合には全く種子が得られないなど,この手法の適用可能な植物種が明らかになかった.この適用範囲を決定している要因を調査したところ,全ての交配組合せにおいて,受粉後の正常な花粉管の伸長および誘引が認められたのに対して,受精後の胚発生では10~20日目に生存率の低下および発生遅延が認められた.PCRによる母親ゲノムの消失時期の検証においても,受精後10~20日目に母親ゲノムが消失している結果が得られ,これらのことから,受精後10~20日目の球状胚以降の発生段階で,母親ゲノムの消失が起きていることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は順調に進展し, (i)ゲノム脱落が生じやすい交配組合せの決定,(ii)ゲノム脱落(ゲノムの自己/非自己)のおおまかなタイミングなど,今後の解析に不可欠なデータが蓄積された.これらのデータを活用して,より詳細な研究に繋げる予定である.
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今後の研究の推進方策 |
DH 系統を簡便に育成できる遠縁交雑法として,アブラナ科機能性新型野菜『香味菜』を用いた交配を発見した.本方法が最も効率的に機能するのが,ミズナを種子親にし,香味菜を花粉親にした場合である.この交配組合せにおいて,受精後10~20日目に注目して,より細かい間隔でサンプリングを行い,いつ,どのように,父親ゲノムの脱落が生じるのか,その後,母親ゲノムが倍加するタイミングはどこなのかを,明らかにしたい. また,作出したDouble Haploid (DH) 系統についても,全ゲノムレベルでホモ化が所持ているのかを,次世代シーケンサーを用いて明らかにしたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
ゲノムの自己/非自己の認識機構は交配配後10日から20日の間の胚発生時に生じていることが明らかになったが、調査資料のサンプリングが間に合わず詳細な調査を行うために計画していた研究費の余剰が発生した。次年度使用額は、より細かい間隔でサンプリングを行い,いつ,どのように,母親ゲノムの脱落が生じるのか,その後,父親ゲノムが倍加するタイミングはどこなのかを,明らかにしするために必要とする試薬等の購入費に当てる。
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