研究実績の概要 |
いつ,どのように非自己ゲノムが脱落し,自己ゲノムが倍加するのか? 特定したステージの胚サンプルに対して WISH (whole mount in situ hybridization) と呼ばれる,組織や個体全体に対するin situ hybridization 解析に挑戦したが,植物研究において以前から常用されていた透明化液に加えて,近年開発されたClearSee(Kurihara et al.,2015),TOMEI(Hasegawa et al.,2016)といった試薬も取り入れて挑戦したが,胚組織内に茶褐色が残り,十分な透明化には至らなかった.そのため,ゲノム脱落に関する詳細は未解明である. しかしながら,後代植物の根端細胞を用いた染色体観察の結果やフローサイトメーターを用いたゲノム量の測定から,後代植物においてはDouble Haploid と同数の染色体数が確認され,ゲノム量の増加も認められないことから,花粉親ゲノムのほとんどすべてが初期に喪失していることが示唆された. また,後代植物のDNAを使用したRAD-seq 法による種子親ゲノムにおいてヘテロ型であった遺伝子座についての遺伝子型判定の結果から,次の2つのことが明らかになった.1つは,得られた後代の1部は,自殖もしくは他殖によって生じたFalse Positive であること,もう1つは得られて後代の中に,ほとんどすべての調査対象遺伝子座ホモになっている個体が含まれていることがわかった.ほとんどすべての遺伝子座がホモとなっている個体については,ヘテロ型と判定された遺伝子座も解析上のエラーである可能性が高く,Double Haploid である可能性が極めて高いと考えている.またRAD_seq解析の結果から,親個体からのクローン個体が生じているわけではなく,自己ゲノムの倍加による順系の作出が示唆された.
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