微生物感染による植物病には、複数の病原体が重複感染し複合的な作用の結果として現れる病害例もあると考えられるが、微生物間の相互作用、および感染植物の細胞内環境の変化に基づく、病原性の制御機構については知見が乏しい。本研究では、一個体の植物に複数の病原体が感染する重複感染に着眼して病原性や抵抗性への影響について研究を開始した。その成果の一つとして、カンキツの病原細菌とカンキツ感染性の病原ウイルスを、カンキツ樹(ナツダイダイ)に重複感染させると、それぞれの単独感染に比べて病原性が強まり、相互に感染を促進させるシナジー作用があることを見出した。またナツダイダイ以外のカンキツ品種を用いて比較すると、重複感染のシナジー作用を再現できる品種と、単独感染の場合と顕著な差が認められない品種があることが示された。ウイルス感染条件下では、細菌に対するカンキツの防御応答が変化することが示され、カンキツ品種間による違いはウイルス感受性と相関する可能性が考えられた。重複感染のシナジー作用は植物の細胞内環境の変化に基づく制御があることが示唆され、その詳細を調べる計画である。
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