研究課題
本研究は、イネ科植物いもち病菌を材料として、特に植物との相互作用に関連する小分子RNAに焦点を当てた研究である。本年度は、昨年度の研究の中で見出した、RNAi経路に依存しない小分子RNAおよび菌体外に分泌される小分子RNAに着目して研究を進めた。RNAi経路に非依存性の小分子RNAとは、ゲノム上のすべてのRdRP、もしくはすべてのDicerを欠失させた変異体でも産生され、AGOに結合しない、ゲノムの狭い特定の領域にマップされるといった性質を持った一群のRNAである。今回、バイオインフォマティクス解析を進めた所、これらは通常のsiRNAよりも短い16-17nt程度の長さのものが大部分であった。また、5'および3'の塩基プレファレンスも、いもち病菌のsiRNAではUが多いが、このクラスの小分子RNAではAが大多数という特徴が認められた。これらの結果は、このクラスの小分生子RNAがこれまでに知られていない経路によって産生されていることを示唆している。また、現在までに、この新規クラスの小分子RNAが実際に細胞内に存在することを、ノーザン解析によりいくつかの分子種で確認した。今後、これらがマップされている領域を破壊したいもち病菌を作製し、その機能解析を行う予定である。細胞外に分泌される小分子RNAについても、解析を進めている。これらはゲノムの転写される領域から産生されている傾向が認められたが、それが含まれる転写RNAの発現量と、分泌性小分子RNAの検出量とは特に相関がなかった。つまり本研究で検出されている分泌性の小分子RNAは、転写されている長いRNAの単なる分解産物ではないと推測された。これらの小分子RNAは、これまでに報告がないものも含まれており、大変興味深いが、その生物学的な意義については、今後の検討が必要である。
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