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2017 年度 実施状況報告書

可塑性を示す青枯病菌の病原性をプライミングするクオラムセンシングの謎に迫る

研究課題

研究課題/領域番号 17K19271
研究機関高知大学

研究代表者

曵地 康史  高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (70291507)

研究分担者 甲斐 建次  大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (40508404)
大西 浩平  高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (50211800)
木場 章範  高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (50343314)
研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2019-03-31
キーワード青枯病菌 / クオラムセンシング / 病原性 / プライミング
研究実績の概要

青枯病菌OE1-1株のゲノム解析の結果から、センサーカイネースをコードしていると推定された44個遺伝子のうち、QS シグナル3-hydroxymyristate(3-OH MAME)の受容センサーカイネースをコードするとされているphcS遺伝子とともに、vsrA遺伝子とRSc1351遺伝子が、QSに関わることが明らかとなった。さらに、レスポンスレギュレータ遺伝子欠損株のスクリーニングから、phcQ遺伝子とRSc0671遺伝子がQSに関与すると考えられた。そこで、3-OH MAME産生能欠損株、phcS遺伝子欠損株とともに、vsrA遺伝子欠損株、RSc1351遺伝子欠損株、phcQ遺伝子欠損株およびRSc0672遺伝子欠損株のトランスクリプトーム解析を、RNA-Seq法にて行い、QSの起動に関わるシグナル伝達系を推察した。さらに、QSにより産生が誘導される産物について、omics解析を行い、ラルフラノン化合物とEPS Iが、QSにより機能化する転写制御因子PhcAの機能化をフィードバック制御するとともに、レクチンLecMが菌体外に分泌された3-OH MAMEの安定化に関わることを明らかにした。3-OH MAME産生能欠損株とラルフラノン産生能欠損株は、細胞間隙から導管への侵入することができず、病原力を失った。一方、主要な菌体外多糖EPS I産生能欠損株とlecM遺伝子変異株は、細胞間隙から導管へ侵入することができたが、病原力を示すことはなかった。これら本年度の成果から、青枯病菌のQS起動に関わるシグナル伝達系の全貌が明らかになった。さらに、QSとそれにより産生が誘導されるラルフラノンが導管への侵入能と病原性に関わる機能分化に関与することとともに、LecMとEPS Iが、導管への侵入後の病原性への可塑性をプライミングする機構に関わることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成29年度の研究計画は、「QSシグナル受容とQSに関わる2成分制御系の道程と機構解明」と「QSにより制御される遺伝子発現系の解明」であったが、QS起動に関わるシグナル伝達系とそれらの遺伝子発現系の全貌を明らかにすることができた。さらに、QSとラルフラノンが導管への侵入能と病原性に関わる機能分化に関与するとともに、LecMとEPS Iが、導管への侵入後の病原性への可塑性をプライミングすることを明らかにし、それぞれの産生能欠損株と親株であるOE1-1株のトランスクリプトーム解析の結果を基に、QS、ラルフラノン、LecMおよびEPS Iが発現に関与するライブラリーを構築することができ、平成30年度の研究を遂行できる準備が整った。

今後の研究の推進方策

平成29年度の研究成果を基に、「QS によるプライミング機構の解明」を目標に、
まず、「プライミングライブラリーの構築」を行う。すなわち、マッシュルーム型バイオフィルム(mBF)から離脱した遊離細胞において、Phc ライブラリー遺伝子の中で、QS 起動時と同様に発現が制御されるライブラリー(プライミング候補ライブラリー)を構築する。プライミング候補ライブラリー各遺伝子の欠損株の導管への移行能と病原性を解析する。それらの株のmBF 形成能を解析する。根から接種した場合には、導管への移行と病原性に関与し、mBF形成と導管へ直接接種した場合の病原性に関与しないプライミングライブラリーとする。本ライブラリーを用いて、「プライミングライブラリー遺伝子の発現の時系列解析」を行う。すなわち、mBF 形成過程での、プライミングライブラリー遺伝子それぞれの発現を時系列的に解析する。以上の結果を総括して、「プライミングライブラリー遺伝子の発現の制御ネットワークの解明」を行う。レスポンスレギュレーター組み換えタンパク質とPhcA 組み換えタンパク質を用い、ゲルシフトアッセイにより、プライミングライブラリー各遺伝子のプロモーターの制御機構を明らかにする。さらに、プライミングライブラリー各遺伝子の欠損株のトランスクリプトーム解析を行い、QS を介したプライミングライブラリー遺伝子の制御ネットワークを解明する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Involvement of ralfuranones in the quorum sensing signaling pathway and virulence of Ralstonia solanacearum strain OE1-1.2018

    • 著者名/発表者名
      Mori, M., Ishikawa, S., Ohnishi, H., Shimatani, M., Morikawa, Y., Hayashi, K., Ohnishi, K., Kiba, A., Kai K. and Hikichi, Y.
    • 雑誌名

      Molecular Plant Pathology

      巻: 19 ページ: 454-463

    • DOI

      10.1111/mpp.12537.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ralfuranones contribute to mushroom-type biofilm formation by Ralstonia solanacearum strain OE1-1.2018

    • 著者名/発表者名
      Mori, M., Hosoi, Y., Ishikawa, S., Hayashi, K., Ohnishi, H., Asai, Y., Ohnishi, H., Shimatani, M., Inoue, K., Ikeda, K., Nakayashiki, H., Nishimura Y., Ohnishi, K., Kiba, A., Kai K. and Hikichi, Y.
    • 雑誌名

      Molecular Plant Pathology

      巻: 19 ページ: 975-985

    • DOI

      10.1111/mpp.12583.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ralstonins A and B, lipopeptides with chlamydospore-inducing and phytotoxic activities from the plant pathogen Ralstonia solanacearum.2017

    • 著者名/発表者名
      Murai, Y., Mori, S., Konno, H., Hikichi, Y. and Kai, K.
    • 雑誌名

      Organic LETTERS

      巻: 19 ページ: 4175-4178

    • DOI

      10.1021/acs.orglett.7b01685.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Regulation involved in colonization of intercellular spaces of host plants in Ralstonia solanacearum.2017

    • 著者名/発表者名
      Hikichi, Y., Mori, Y., Ishikawa, S., Hayashi, K., Ohnishi, K., Kiba A. and Kai, K.
    • 雑誌名

      Frontires in Plant Science

      巻: 8 ページ: 967

    • DOI

      10.3389/fpls.2017.00967.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 青枯病菌OE1-1 株の主要な菌体外多糖EPS I は,クオラムセンシングによる制御される遺伝子発現に寄与する2018

    • 著者名/発表者名
      林 一沙・氏田夢斗・大西浩平・木場章範・甲斐建次・曵地康史
    • 学会等名
      日本植物病理学会平成30年度大会
  • [学会発表] lasI 遺伝子は青枯病菌OE1-1 株のhrpの発現制御に関与する2018

    • 著者名/発表者名
      林 一沙・甲斐建次・木場章範・大西浩平・曵地康史
    • 学会等名
      日本植物病理学会平成30年度大会
  • [学会発表] ラルフラノン化合物は青枯病菌によるマッシュルーム型バイオフィルム形成に関与する2018

    • 著者名/発表者名
      曵地康史・林 一沙・井上加奈子・大西浩平・木場章範・甲斐建次
    • 学会等名
      日本細菌学会第91回総会
  • [学会発表] 二次代謝物質による青枯病菌のクオラムセンシングのフィードバック制御2018

    • 著者名/発表者名
      林 一沙・甲斐建次・大西浩平・木場章範・曵地康史
    • 学会等名
      日本細菌学会第91回総会
  • [学会発表] 青枯病菌OE1-1株のクオラムセンシングに関わる新奇センサーカイネース遺伝子の同定2017

    • 著者名/発表者名
      林一沙・石川詩歩・森友花・木場章範・大西浩平・甲斐建次・曵地康史
    • 学会等名
      日本植物病理学会平成29年度大会
  • [学会発表] ラルフラノン化合物は、青枯病菌OE1-1株のクオラムセンシングのフィードバック制御に関与する2017

    • 著者名/発表者名
      森友花・石川詩歩・林一沙・木場章範・大西浩平・甲斐建次・曵地康史
    • 学会等名
      日本植物病理学会平成29年度大会
  • [学会発表] ラルフラノン化合物は、クオラムセンシングにより阻害される青枯病菌OE1-1株のマッシュルーム型バイオフィルム形成を抑制する2017

    • 著者名/発表者名
      森友花・細井勇希・石川詩歩・林一沙・浅井 遊・木場章範・大西浩平・甲斐建次・曵地康史
    • 学会等名
      日本植物病理学会平成29年度大会
  • [学会発表] 青枯病の化学防除を志向したクオラムクエンチング法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      吉原彩華・嶋谷美香・曵地康史・甲斐建次
    • 学会等名
      日本植物病理学会平成29年度大会
  • [学会発表] Involment of ralfuranones in the quorum sensing signaling pathway and virulence of Ralstonia solanacearum strain OE1-12017

    • 著者名/発表者名
      Hikichi, Y., Mori, Y., Hayashi, K., Kiba, A., Ohnishi, K. and Kai, K.
    • 学会等名
      The 7th Congress of European Microbiologists
    • 国際学会
  • [学会発表] Chemical quorum quenching attenuates Ralstonia solanacearum virulence on plants2017

    • 著者名/発表者名
      Kai, K., Yoshihara, A., Shimatani, M. and Hikichi, Y.
    • 学会等名
      The 7th Congress of European Microbiologists
    • 国際学会
  • [学会発表] 青枯病菌によるマッシュルーム型バイオフィルム形成機構2017

    • 著者名/発表者名
      曵地康史・林一沙・木場章範・大西浩平・甲斐建次
    • 学会等名
      植物微生物研究会第27回研究集会
  • [学会発表] methyl 3-hydroxymyristateをクオラムセンシングシグナルとするRalstonia solanacearum OE1-1株のクオラムセンシングにおいてシグナル伝達に関わる新奇センサーカイネース2017

    • 著者名/発表者名
      林一沙・大西浩平・木場章範・甲斐建次・曵地康史
    • 学会等名
      植物微生物研究会第27回研究集会

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公開日: 2018-12-17  

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