研究課題
平成29年度は、農薬代謝酵素であるグルタチオン転移酵素(GST)のX線立体構造を解析し、基質認識機構を調査することを目的としている。具体的には、(1)カイコunclassified GST2(bmGSTu2)の結晶化、(2)bmGSTu2のX線結晶構造解析、(3)bmGSTu2の基質認識部位の同定について試みた。(1)について、bmGSTu2の組換えタンパク質を大腸菌内にて作製し電気泳動的に均一に精製した。この精製酵素を用いてapo-bmGSTu2ならびにグルタチオン- bmGSTu2の結晶作製を試みた。その結果、apo-bmGSTu2結晶を得ることに成功した。グルタチオン- bmGSTu2の複合体結晶は未だ得られていない。そこで、共結晶そしてソーキング法を用いて複合体結晶作成を試みが、複合体結晶は平成29年度中に得ることはできなかった。(2)に関して、得られたapo-bmGSTu2結晶をもとに、Hg原子を浸透させた重原子同形置換法により結晶構造解析を行なった。SPring8にて回折データを取得後、分解能1.68 オングストローム、R-work=18.65%そしてR-free=22.10%の条件まで精密化を進めることができた。(3)について、他GST構造との重ね合わせにより、5個の残基を基質結合に関与するアミノ酸として見出した。アミノ酸残基を部位特異的アミノ酸置換法により当該アミノ酸残基をAlaへ変異した。各酵素変異体の組換え酵素を大腸菌にて発現し、精製した。すでに完成しているアッセイ法により、それぞれの変異が活性に及ぼす影響について調査した。その結果、いずれの変異酵素においても大幅な活性低下が観察された。以上、これらのアミノ酸残基はbmGSTu2活性に重要であることが示された。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度におけるbmGSTu2に関する研究の進捗については、apo-bmGSTu2の結晶化ならびにX線結晶構造解析に成功した。これにより、bmGSTu2分子中のグルタチオン結合部位、基質結合部位、二量体形成部位、プロトンリレー関連部位の構造学的解析が可能となった。bmGSTu2の基質結合部位を立体構造的に解析し、基質結合に重要なアミノ酸残基を推定した。また、部位特異的アミノ酸置換法ならびに酵素化学的速度論的解析を用いて、基質結合に重要なアミノ酸残基を同定した。
平成29年度はグルタチオンーbmGSTu2複合体の結晶を得ることできなかった。平成30年度は、結晶化条件を細かくし、引き続き複合体結晶の作製を試みる。また、グルタチオン結合、基質結合部位、二量体形成部位、プロトンリレーに関与するアミノ酸残基を同定する。さらに、ゲノム編集技術によりbmGSTu2ノックアウトカイコを作製する予定である。
次年度使用額「21,284円」が生じた。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Nature Ecology & Evolution
巻: 1 ページ: 1747-1756
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 492 ページ: 166-171
Journal of insect science
巻: 17 ページ: 1-3