研究実績の概要 |
本研究では、主要な農薬代謝酵素として知られている昆虫由来グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)をターゲットとして研究を進めている。昆虫GSTとして、デルタ、シグマ、イプシロン、オメガ、シータそしてゼータの各クラスGSTが知られている。申請者は、カイコよりいずれのクラスにも属さないunclassified GST2 (bmGSTu2)を発見し、bmGSTu2が有機リン剤(ダイアジノン)を基質としたグルタチオン抱合反応を触媒すること、ダイアジノン-グルタチオン抱合体の同定、そしてbmGSTu2のX線結晶構造解析などを行なってきた。 R1年度は、すでに得られているX線結晶構造をもとにbmGSTu2分子中のアミノ酸残基Ser16, Asn102, Pro162そして Ser166がelectron-sharing networkを構成していることを予測した。そこで、部位特異的アミノ酸置換法により当該アミノ酸残基をAlaに置換した変異体を作製し、酵素反応測度論的解析を実施した。野生型bmGSTu2と比較した際、いずれの変異体においてもGST標準基質である1,2-ジロロニトロベンゼンに対する触媒活性(kcat/Km)の低下が観察された。また、ダイアジノン分解活性を高速液体クロマトグラフィーにて測定した。その結果、いずれのbmGSTu2変異体もダイアジノン分解活性を示さなかった。これらの結果より、bmGSTu2分子中のSer16, Asn102, Pro162そしてSer166はbmGSTu2活性発現において重要であることがわかった。これらの各残基はelectron-sharing networkを構成メンバーであり、共同して電子の受け渡しに寄与していることが示唆された。
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