本研究では、人工制限酵素であるCRISPR/Cas9を利用することで、減数分裂組換え位置を人為的に改変するための技術を開発することを目指す。最終年度は、以下の2課題について研究を実施した。 課題1.可視的かつ簡便に減数分裂組換えイベントを検出できるシステムの構築 本課題では、塩基欠失等により機能が欠損したルシフェラーゼ(LUC)遺伝子をbiallelicに有する減数分裂組換えイベント検出用植物を作出することを目的とする。昨年度までに、LUC遺伝子が1コピー導入されたイネ(品種日本晴)カルスに、LUC遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9発現ベクターを導入することにより、LUC遺伝子に変異が導入された再分化個体を得た。今年度は、これら個体を栽培したところ、一部の系統では不稔が確認されたため、再度形質転換実験を行い、再分化個体を得た。また、シロイヌナズナでも同様の系統を作出する実験を行い、複数の候補系統を得た。 課題2.減数分裂期にCRISPR/Cas9を発現させるシステムの開発 本課題では、減数分裂期にCRISPR/Cas9を発現させるベクターを構築することを目的とする。昨年度までに、減数分裂期で特異的に発現すると予想されるプロモーター領域を単離し、リボザイムを用いてgRNAとCas9を減数分裂期に同時に発現させるベクターを構築した。また、これらのベクターをイネ(品種日本晴)に形質転換していた。今年度は、得られたT1個体の解析を行ったところ、調べたいずれの系統でも標的遺伝子に変異が導入されていなかった。そこで、減数分裂期で特異的に発現すると予想されるプロモーターでCas9を、イネのU6プロモーターでgRNAを発現させるベクターを構築し、イネに形質転換を行った。
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