研究課題
本研究の目的は、原発周辺水域において魚類のケージ試験を行い、放射性セシウム(Cs)濃度の高い試験魚を人為的に生み出す野外実験系を確立するとともに、当試験魚等を用いた飼育試験など、積極的アプローチにより魚類のCs汚染メカニズムの解明に挑むことである。平成30年度は、原発周辺の貯水池に生息する魚類のCs濃度の解明に努めるとともに、非汚染の養殖魚を用いたケージ試験を行い、当試験の有効性を検討した。昨年度に引き続き、帰還困難区域に位置する貯水池において刺し網等を用いた魚類の採集調査を行い、原発周辺の貯水池では、依然としてCs-137濃度が数千~1万ベクレル/kg以上の魚類(コイ、フナ類、オオクチバス等)が多数存在することを明らかにした。また、原発周辺の貯水池において非汚染のウナギを収容するケージ試験(1m×1m×0.5mのケージを8個設置、3個体/ケージ)を6月下旬~8月下旬行った結果、ウナギのCs-137濃度が、2か月間で最大数十ベクレル/kgに上昇することを明らかにした。これらの濃度は環境水のCs-137濃度(数ベクレル/L)よりも高いものの、貯水池に生息する魚類よりも著しく低く、餌生物を介したCsの取込み量が少ないことを示唆した。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度は、原発周辺の貯水池に生息する魚類や環境中(水、底泥)のCs濃度を明らかにするとともに、非汚染のウナギを用いたケージ試験を実施した。また、貯水池に生息する魚類の筋肉を原料としたCs含有の配合餌料を作成し、魚類を用いた室内閉鎖循環システムでCsの取込と排出を明らかにする手法の確立に努めた。また、帰還困難区域内も含めた福島県に生息する淡水魚のCs汚染状況および原発周辺のため池におけるCsの挙動に関する論文等を、学術誌を通じて公表した。以上のように、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
ケージ試験では、魚類のCs濃度を高めることができるものの、餌生物からのCsの取込は天然魚に比べて著しく低いと考えられた。今後は、Cs含有の配合餌料やCs含有の環境水を用いて、ウグイ等を用いた室内飼育試験を行い、餌由来、環境水由来のCsの取込と排出について、明らかにする必要がある。
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