研究課題
本研究の目的は、原発周辺水域において魚類のケージ試験を行い、放射性セシウム(Cs)濃度の高い試験魚を人為的に生み出す野外実験系を確立するとともに、モデル魚種を用いた飼育試験など、積極的アプローチにより魚類のCs汚染メカニズムの解明に挑むことである。平成30年度までに行ったコイやウナギの試験結果より、ケージ試験により魚類のCs濃度を高めることができるものの、同じ水域に生息する天然魚のCs濃度よりも著しく低いことから、ケージ内において餌生物を介したCsの取込は少なく、環境水からのCsの寄与も大きくない可能性が考えられた。そこで、今年度は、原発周辺のため池から採集したCsを含有する環境水(約2Bq/L)を用いたウグイの飼育試験を2か月間行い、筋肉中と環境水のCs濃度の比率(concentration ratio: CR)により、水からのCsの寄与の度合いを把握した。また、昨年度に引き続き、帰還困難区域に位置する貯水池や河川において刺し網や電気ショッカー等を用いた魚類の採集調査を行い、餌生物あるいは環境水からのCsの寄与について推察した。Csを含有する環境水下でのウグイの飼育試験の結果、ウグイ筋肉中のCs濃度は試験開始後56日目で平均10 Bq/kgとなり、モデルに当てはめたCRの極限値は9.73と推定された。つまり、餌からのCsの寄与がない場合、ウグイの筋肉中のCs濃度は環境水の約10倍に濃縮され得ることが明らかとなった。一方、同じ水域のため池に生息する魚類(コイ、フナ類、オオクチバス等)の筋肉中のCs濃度は、依然として数千~1万ベクレル以上であり、CR値も平均で約2000と飼育試験の理論値よりも著しく高いことから、天然環境下では環境水中のCsによる寄与は少なく、餌生物を介したCsの取込みが主な汚染経路であることが強く示唆された。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件)
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