研究課題/領域番号 |
17K19282
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木下 滋晴 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40401179)
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研究分担者 |
柿沼 誠 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (60303757)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | アコヤガイ / 真珠 / 遺伝子導入 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
淡路ら(2011)の手法に基づき、アコヤガイから外套膜縁膜部を採取し外面上皮細胞を分離した。その結果、約1.0×107個の細胞を多数の細胞塊として得た。導入する遺伝子として、サイトメガロウィルスプロモーターの下流に赤色蛍光タンパク質であるDsRed配列を有するベクターおよび、in vitro転写により合成したGFP mRNAを用いた。導入方法としてエレクトロポレーション法、リポフェクション法、および磁性粒子とリポフェクション法を組み合わせた方法の3つを検討した。しかしながら遺伝子導入を確認することはできず、細胞を覆う粘液の除去などが改善策として必要と考えられる。また、CMVプロモーターの活性がアコヤガイの外套膜外面上皮細胞では弱いことも考えられ、マガキでの活性が報告されている熱ショックタンパク質プロモーターやアコヤガイ遺伝子のプロモーターなどの利用を検討する必要がある。 一方、CRISPR/Casによるゲノム編集の適用については、真珠層形成関連遺伝子であるnacreinをターゲットとして、成体の閉殻筋への注射によって、Cas9タンパク質およびgRNAを導入し、その後各組織から抽出したDNAを鋳型として変異導入部位周辺をPCRで増幅した。PCR産物をMultiNAによるHMA解析に供したところ、導入した3個体中2個体につき、解析したすべての組織でコントロールには見られないバンドのシフトが観察された。現在、シーケンスによる変異導入の確認を行うと共に、nacrein以外の遺伝子についてもゲノム編集による変異導入を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は外套膜上皮細胞への遺伝子導入とゲノム編集の適用を予定し、予定通り、これらの実験を行うことができた。外来遺伝子導入に関しては、様々な手法、条件を検討したが、良好な結果を得ることができなかった。一方、ゲノム編集に関しては、当初分離した外套膜上皮への導入を検討する予定であったが、成体の閉殻筋に注入するという簡便な方法で、外套膜を含む全身の組織でゲノム編集が行われる可能性があることが明らかになった。現在結果の検証中であるが、簡便かつ効果的なゲノム編集技術としてアコヤガイを含む二枚貝類の研究に大きな進展をもたらす可能性が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はゲノム編集技術の検証と確立に注力する。シーケンシングや他の遺伝子をターゲットとした再実験で、ゲノム編集の結果を確認する。また、ゲノム編集を行った貝から外套膜上皮を単離し、外套膜上皮での遺伝子改変の有無を確認する。真珠形成に関連する様々な遺伝子をターゲットにゲノム編集を行い、表現型への影響を確認するとともに、既報のノックダウンによる表現型との違いを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度行う予定であった遺伝子導入実験につき、三重大学で行った実験の一部でアコヤガイの入手が間に合わず、実験が次年度への繰り越しとなったため、サンプリングに伴う旅費、消耗品の購入等に要する費用を繰り越した。
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