研究課題/領域番号 |
17K19283
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
堀川 祥生 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 特任准教授 (90637711)
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研究分担者 |
船田 良 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20192734)
梶田 真也 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40323753)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 木質細胞壁 / セルロース / ヘミセルロース / リグニン / 赤外分光分析 / 透過型電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
赤外線吸収スペクトルから相対リグニン量を見積もるため、検量モデルの構築を試みた。針葉樹木粉を様々な化学処理を施し、得られた試料についてクラーソンリグニン量を分析した。分析データと赤外吸収スペクトルの相関を図った。すべての試料で観察された赤外吸収バンドについて検討した結果、リグニンに含まれるベンゼン環の骨格振動に相当する赤外吸収バンドとCHの伸縮振動に帰属されるバンドの高さの比を求めたところ、化学分析から見積もったリグニン量と高い相関が得られた。したがって、赤外分光分析からリグニン量のハイスループット解析が可能となった。本成果については国際論文に掲載された。 29年度の成果に基づき、スギカルスから調製した多糖ネットワーク構造に抗キシログルカン抗体を反応させた。次に、ペルオキシダーゼが結合した二次抗体を反応させたところ、金コロイド標識の際と同様の局在がTEM観察から認められた。これにモノリグノール水溶液ならびに過酸化水素を滴下して、人工リグニンであるDHP(Dehydrogenation polymer)合成を開始した。その結果、合成開始30分後には多糖ネットワーク間隙に不定形物質の堆積がTEM観察によって認められた。さらに反応時間を続けたところ、多糖ネットワークの形態が不明瞭になるほど不定形物質の堆積が確認された。このTEMグリッドを顕微IR分光分析にそのままセットし、スペクトルを取得した。その結果、1600と1508 cm-1というベンゼン環の骨格振動に帰属されるバンドに加え、1276 cm-1というリグニンのCH変角振動に帰属される赤外吸収バンドも観察された。したがって、TEM観察による形態評価ならびに顕微赤外分析による成分評価の結果、多糖ネットワーク上に担持したペルオキダーゼの活性による人工リグニンの重合に成功し、木質細胞壁を人工的に合成する新規基盤技術を構築できた。
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