1. 細胞培養に用いる培地などの検討について、昨年度の研究では5%ウシ胎児血清の添加は細胞増殖に良い影響を与えないと報告したが、今年度は血液系以外の組織、細胞の培養を試みたところ、生殖組織の細胞ではウシ胎児血清を10%添加することにより細胞が増殖することを確認できた。細胞が増殖する際の細胞周期マーカーとなる遺伝子群のホモログをクローン化し、それら遺伝子の発現を調べたところ、増殖している状態とそうでない状態では遺伝子発現パターンに違いが見られた。本研究では生殖組織由来の細胞を2倍濃度のL15培地と10%ウシ胎児血清を添加した培地で培養に成功した。しかし、生殖組織以外の組織由来の細胞ではこれまでに検討した培地条件では細胞増殖は認められなかったことから、さらなる培地と培養条件の検討が必要である。 2. 血球細胞の分類を分子レベルで行うために、今年度は種々のレクチンを用いて解析を行ったところ、レクチンの種類にもよるがクルマエビの血液細胞を分類できることがわかった。特定のレクチンに対する結合能力と貪食能力にも関係があることがわかり、レクチンによる染色はクルマエビの血球分類の一つの指標になることがわかった。 これらの研究により、クルマエビの細胞を培養できることがわかり、今後の検討で複数種類の細胞培養を行える可能性を示すことができた。さらに血液細胞においては、従来の染色法ではなく、血液細胞の分子レベルでの違いにより分類できることを示すことができた。
|