研究課題/領域番号 |
17K19286
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉田 正人 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30242845)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 圧縮あて材 / 細胞接着 / ペクチンメチルエステラーゼ |
研究実績の概要 |
針葉樹の仮道管細胞の横断面を顕微鏡で観察すると、あて材の細胞はまるい形をしている。応募者は、次世代シークエンサーを用いて、あて材でペクチンメチルエステラーゼ遺伝子の発現が抑制されていることを明らかにした。この遺伝子は細胞間の接着にかかわっている。細胞形成の途中で細胞間の接着が不十分になるから、あて材細胞はまるい形になるのだろうか。本研究で、あて材細胞がまるい形になる仕組みを明らかにする。 本年度の研究結果は、 1. ペクチンメチルエステラーゼ遺伝子発現量と細胞の形との関係を解明した。苗木を傾斜生育してあて材試料を調整し、定量PCR解析の比較Ct法によりペクチンメチルエステラーゼ遺伝子発 現量と細胞のまるい形との相関分析を行った結果、この遺伝子の下方制御と細胞のまるみとには非常によい相関があった。 苗木を傾斜し角度を変えることで、発達程度の異なるあて材試料を調整できた。定量PCRの比較Ct法を用いて、発現するペクチンメチル エステラーゼ遺伝子を定量し、調整したあて材細胞横断面のデジタルイメージを取得し、画像計測によってまるい形を円形度によって定量した。 2. ペクチンメチルエステラーゼが細胞形成のいつ、どこで働いているかを明らかにするため、ペクチンメチルエステラーゼ抗体を作成した。 これまでの研究で入手した遺伝子配列の情報から、タンパク の高次構造を求め、抗体に認識させる領域を設計した。その設計をもとに複数種類の抗体を作成した。その中の一つがペクチンメチルエステラーゼを特異的に標識できることを明らかにした。これにより、次年度で使用する抗体が作成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、ペクチンメチルエステラーゼ遺伝子発現量とあて材細胞のまるみとの相関が得られた。試料が順調に生育できあて材程度がことなる試料が準備できた。また、ペクチンメチルエステレーゼを特異的に認識する抗体の作成が行えたことらが、その理由である。
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今後の研究の推進方策 |
作成したペクチンメチルエステラーゼの抗体を用いて、細胞形成のいつ、どこで働いているかを明らかにする。苗木を人為傾斜させることで、さまざまな程度のあて材を誘導して試料に用いる。分化中木部を採取し、瞬間凍結・凍結 置換を行う。その後、樹脂切片と凍結切片を作成する。切片をペクチンメチルエステラーゼ抗体で免疫染色し、 共焦点レーザー顕微鏡を用いて、標識を観察する。これによりペクチンメチルエステラーゼが細胞形成のいつ、 どこで働いているかを調べる。 まるい形と姿勢調整機能の関係を明らかにする
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次年度使用額が生じた理由 |
ペクチンメチルエステラーゼの抗体作成に時間を要した。複数回の抗体作成を経て、使用できる抗体が作成できたため、免疫顕微鏡法の実施回数が当初予定よりも少なったことが、その理由である。次年度は免疫顕微鏡法を当初予定数通りに実施するため、実験数に応じた2年分の費用が必要となる。共通機器の利用状況によっては、いくつかについて専用機の導入も検討し研究遂行を図る。
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