針葉樹の仮道管細胞の横断面を顕微鏡観察した場合、あて材の細胞はまるい形をしている。応募者は、次世代シークエンサーを用いて、あて材でペクチンメチルエステラーゼ遺伝子の発現が抑制されていることを明らかにした。この遺伝子は細胞と細胞の接着にかかわっている。細胞壁の形成途中で細胞間の接着が不十分になるので、あて材細胞はまるい形になるのではないだろうか。本研究では、ペクチンメチルエステラーゼに着目し、あて材細胞がまるい形になる仕組みを明らかにする。 本年度は、前年度までの結果を検証するためサンプルサイズを増やしてデータの充実を図ったことと、前年度に作成した一次抗体を用いて免疫染色実験を実施した。 (1)苗木を傾斜生育してあて材試料を調整し、定量PCR解析の比較ct法によりペクチンメチルエステラーゼ遺伝子発現量と細胞のまるい形との相関分析を行った。その結果、着目遺伝子の下方制御と細胞のまるみとにはよい相関があった。傾斜角度を変えることで、あて材の発達程度を調整した試料生育を行った。まるみはデジタルイメージを取得し、画像計測から円形度を指標に定量した。 (2)前年度に作成したペクチンメチルエステラーゼ抗体を用いた免疫染色検鏡法で、ペクチンメチルエステラーゼが細胞形成のいつ、どこで働いているかを調べた。また、各種多糖類の存在部位を調べ、それと合わせてまるみ形成の仕組みを考察した。 以上の成果を論文にまとめ投稿した。
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