研究課題/領域番号 |
17K19294
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
後藤 理恵 (風藤理恵) 愛媛大学, 南予水産研究センター, 准教授 (70399997)
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研究分担者 |
松原 孝博 愛媛大学, 南予水産研究センター, 教授 (60443389)
斎藤 大樹 愛媛大学, 南予水産研究センター, 准教授(特定教員) (90396309)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 胚融合 / コンピテント胚 / 生殖系列キメラ |
研究実績の概要 |
本年度は胚融合の生物学的メカニズムを明らかにするため、種々の実験的操作による胚融合誘起を試みた。まず、前年度同様、酸とアルカリによる薬剤処理による融合を試みた。この実験の結果、平均するとおよそ10%程度の胚で融合が可能であることが確認された。続いて、物理的ダメージ誘起による胚融合の誘起を試みた。超微小ガラス針により胚融合モールドに固定した2個体の接触面を傷つけたところ、その後の発生過程で、すべての個体において速やかな胚の融合が認められた。これらの結果は、胚融合は上皮層の微小な傷を2個体で接触共有することにより生じることを示している。そこで最後に、プラズマ発生装置により、胚融合モールドに固定した2個体の上皮層にダメージを与え、融合が生じるかどうかを観察した。その結果、およそ10%の胚で融合が認められた。プラズマによる電気的ダメージとそれに続くエンドサイトーシスが胚融合に関与している可能性がある。このことは、胚融合のプロセスを機械制御できる可能性を示しており、融合胚作出の効率化につながるものと期待される。 並行して、胚融合用モールドの改良も行った。光造形式3Dプリンタにより様々な形状の胚融合モールドを試作し、胚融合の成否を調べたところ、比較的効率的にコンピテント胚を静置できるモールド形状が明らかとなった。この改良モールドを使用すると、短時間で数10ペアの胚を融合実験用に準備することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胚融合の生物学的メカニズムが明らかになりつつあり、胚融合条件も改良されている。これまで全く知られていなかった「魚類胚の融合現象」を人為的にコントロールできつつあるという点で、萌芽研究として順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度はこれまで明らかにしてきた「胚融合現象」に関する情報を論文としてまとめるとともに、胚融合条件を更に洗練させマニュアル化する。また、胚<->細胞(あるいは細胞塊)の融合を検討し、生殖系列キメラの作出を試みる。この実験のために研究室では、すでに生殖細胞に緑色蛍光タンパク質を有するトランスジェニックゼブラフィッシュ系統(vasa::GFP/AB strain)および生殖細胞のモニタリングを容易にするアルビノ系統および透明鱗系統(Casper)を購入し維持しており、これらの系統を駆使して実験を行う予定である。具体的には、トランスジェニック系統の胞胚期胚盤を乖離あるいは断片化し、アルビノあるいはcasper系統胚に融合する。可視化された生殖細胞の取り込まれ率を融合杯中で観察し、生殖系列キメラが作出されるか田舎を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、胚融合用モールド作成のための金型作製は専門業者に委託することを想定していた。しかしながら、近年の3Dプリンタの低価格化と高精細化、さらには設計用のCADソフトウェアの教育機関における無料化により、比較的安価にモールド形状を試作する環境を研究室内に構築することができた。このことから、当初予定よりも大幅に研究をコストダウンすることができた。しかしながら来年度は各種ゼブラフィッシュ系統の飼育システムを見直し、より効率的に研究を行うための環境整備に投資を行う。それに加えて、作出する予定の生殖系列キメラの各種分析に用いる物品費がかさむことが予想される。
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