研究実績の概要 |
本研究では,近年卓越年級群の出現により資源状態が回復し,ほぼ30年ぶりに親魚を入手できるようになったマイワシを対象として,生殖生理・内分泌学的観点から飼育下で産卵しない原因を解明するとともに,飼育下での再現性の高い産卵誘導技術を開発することを目的とする。 前年度に引き続き、(独)水産研究教育機構瀬戸内海区水産研究所伯方島支所において飼育されたマイワシを採集した。それぞれ雌雄が10尾になるまで取り上げ、生殖腺を摘出した後、生殖腺の発達状態をモニターした。本年度は雄では精子形成期~排精期、雌では卵黄形成中期~後期の個体が得られ、前年度の標本もあわせ、雌雄ともに、生殖周期を形成するすべての発達段階の個体が得られた。 2種生殖腺刺激ホルモン(FSH, LH)およびそれらの受容体(FSHR,LHR)、3種GnRH(GnRH1, GnRH2, GnRH3)および脳下垂体に局在するGnRH受容体(GnRHR)、2種キスペプチン(Kiss1, Kiss2)およびそれらの受容体(Kiss1R,Kiss2R)の遺伝子クローニングを行い、それら遺伝子の全長を解読した。また、リガンドと受容体の結合能をレポーター遺伝子アッセイで解析するとともに、FSHおよび LH、ならびに3種GnRHの特異抗体を用いて、生殖腺刺激ホルモンのGnRHによる制御機構を免疫組織学的手法により解析した。 飼育下の雌では、卵黄形成終了時におけるGnRH1の分泌障害に起因したLHの未放出により最終成熟が起こらないことが判明した。一方、雄では精巣の成熟が順調に進行した。卵黄形成終了後の雌と排精雄を選別し、背筋部に合成GnRHを筋肉投与することにより産卵が誘導でき、受精卵が得られた。産卵誘導は複数回行い、何れの実験でも確実に樹背う卵が得られた。 以上、本研究により、飼育下のマイワシが産卵しない原因が明らかになるとともに,飼育下での再現性の高い産卵誘導技術が開発された。
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