研究実績の概要 |
海・川・湖沼などの環境水に懸濁している動物由来のDNAを分析することで、希少種や外来種を含む脊椎動物(魚類・四足類)の存在を高感度で検出する環境DNA分析の研究開発を進めた。前年度に続いて、沖縄県をモデルとした動物の環境DNA分析を進めた結果、すでに検出に成功していた県内の希少動物(ヤンバルクイナ、ホルストガエル、メダカなど)に加えて、新たにタイワンキンギョ(在来トウギョ)、カラスバト、ケナガネズミ、タウナギ、ドジョウを検出することが出来た。また、外来種ミシシッピアカミミガメ、コウタイ、プラティ、マングースも検出することが出来た。以上から、研究代表者らが開発してきた次世代シークエンサーとメタバーコーディング技術による環境DNA分析によって、脊椎動物全般(魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)の希少種・外来種を検出・評価することの実現可能性が支持されたと考える。さらに、人獣共通感染症の病原細菌であるレプトスピラについて、河川水の環境DNから分析し、その宿主候補となる動物(イノシシ、オオコウモリなど)の検出と相関解析を行った。この成果を論文として出版することが出来た(Sato Y, Mizuyama M, Sato M, Minamoto T, Kimura R, and Toma C. 2019. Environmental DNA metabarcoding to detect pathogenic Leptospira and associated organisms in leptospirosis-endemic areas of Japan. Scientific Reports, 9, 6575)。以上から、本研究で掲げた動物全般の環境DNA検出と生態疫学への応用という目的について、技術面と成果面の両方で、予定していた内容のうちかなりの部分を達成できたと考える。
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