研究課題/領域番号 |
17K19303
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
澤田 浩一 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産工学研究所, 主幹研究員 (30372080)
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研究分担者 |
向井 徹 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (60209971)
松裏 知彦 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産工学研究所, 研究員 (70735894)
長谷川 浩平 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (30826558)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 遺伝的アルゴリズム / 指向性 / 位相中心間距離 / 積層圧電素子 |
研究実績の概要 |
Amakasu et al.(2013)による積層圧電素子をアクリル樹脂板で挟みランジュバン構造にする技術を用い,周波数40 kHz,70 kHz,100 kHzを中心とする周波数帯域が使用できる送受波器の開発を目的としている。これらの周波数は計量魚群探知機に用いられる複数の周波数帯域をカバーするため,1隻の船に複数の送受波器を装備する必要がなくなるためコスト減となり,漁船にも導入できる多周波数かつ広帯域システムが実現できる。測定精度を上げるため送受波器の指向性を鋭くすると、直径が大きくなり素子数が増える。別事業で開発した、同じ構造を持つ送受波器では、配列を計算して不規則配列とし、少ない素子数で鋭い指向性を得ることに成功したが、不規則な配列とすることにより、ターゲットの位置を特定するために必要な、位相中心間距離が方向により大きく異なっていた。この値は、本来は方向によらず一定である方が測定誤差の観点からは望ましい。これまでのランダムに並べた不規則配列から複数の条件を満たす最適な素子配列を求めるのには時間がかかる。そこで、目標に近い配列が有利となるように、交叉・突然変異を繰り返す遺伝的アルゴリズムに着目した。遺伝的アルゴリズムを用い、指向性だけでなく、位相中心間距離を含めた複数の条件について最適な素子配列を計算できる手法を開発した。また、実験による検証を行うため、標準球と送受波器の相対的な位置を変えてエコーデータを得ることにより、広帯域送受波器の指向性、位相中心間距離といったパラメータを精確に得るための測定手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目までに素子配列を決定して、新しい素子配列の送受波器を作り、その特性を測定予定であったが、素子配列の決定で、さらに条件を加えたために少し遅れている。別事業で製作した同じ構造を持つ送受波器(直径34 cm)を使い、標準球を使用して、送受波器の指向性、位置測定精度の測定を行ったところ、送受波器のサイズと周波数との関係から、広帯域で用いる場合の高周波側については、送受波器から標準球までの距離が、近距離音場から遠距離音場への遷移領域にあり、精確な測定が難しいことがわかった。水槽の大きさによる制限から、送受波器のサイズを小さくする必要がある。そこで、同じ送受波器でその一部分の素子配列(直径20 cm相当の5波長)だけでも、また全体を使用しても有効に使用できる配列についても探索することにした。
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今後の研究の推進方策 |
直径が5波長(1波長=1500/38000、直径約20 cm)相当、8.5波長相当(直径約34 cm)の2種類の直径で使用できる配列を計算し、別事業で開発した送受波器に組み込む。水産工学研究所の実験水槽で指向性、位相中心間距離の測定を行い、計算値との比較を行うことにより、音響特性の測定方法の検証を行う。直径が2種類でできるようにする理由は、送受波器が広帯域であるため、同じ直径で使う場合には、高周波で近距離音場から遠距離音場に変わる距離が遠くなり、水産工学研究所の水槽では測定が難しくなるためである。このため、広帯域で使用する場合には5波長相当の直径を使った測定を行う。測定とデータ収録には、別事業で開発した広帯域送受信機を使用する。同じ直径の送受波器を広帯域で使用する場合、高周波でビームが鋭くなるが、高周波を使用する場合には、5波長相当での計算結果を使うなどの応用が期待できる。また、直径が5波長の送受波器の開発にもつながる。
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次年度使用額が生じた理由 |
送受波器に素子を配置するためのプラスティック板の設計、製作費用を見込んでいたが、配置計算に時間がかかったため、翌年回しとした。この経緯として、2019年2月末までに、周波数38 kHzを使用した時の直径8.5波長(8.5×1500/38000、音速1500 m/sを仮定、直径約34 cm)送受波器用の計算が終了したが、高周波での近距離音場の問題から、水産工学研究所の大型水槽でも精確なターゲットストレングスの測定が難しいことがわかった。直径を小さくすれば、遠距離音場と見なせる距離は短くなるため、直径8.5波長でも、その一部となる直径5波長でも、測定誤差精度が小さくなるような配列についても計算することにした。直径5波長相当のビーム幅は周波数38 kHzで11.8度程度であり、直径は20 cm程度で、沿岸の漁船でも使用できるため、使用可能な漁船数は増える。今後、ビーム幅、位相中心間距離の条件を5月中に探索し、6,7月で製作し、8月以降に水槽試験を実施予定である。
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