研究課題/領域番号 |
17K19308
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
杉原 創 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 特任准教授 (30594238)
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研究分担者 |
宮嵜 英寿 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 外来研究員 (30455232)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 半乾燥熱帯畑作地 / 小規模灌漑 / 塩類集積 / 井戸水灌漑 |
研究実績の概要 |
本研究では、南インド・畑作地帯の数千年の歴史を持つ伝統的な小規模井戸水灌漑農業の持続性成立要因に関して、申請者が同地帯で発見した炭酸カルシウム岩層(CaCO3岩層)の生成機構とその農学的意義に着目して解明するものである。 研究初年度であった昨年度は、複数回にわたる現地調査を実施し、現地で営まれている伝統灌漑に着目した土地管理がもたらす土壌中の物質循環を解明するための予備試験を開始した。またCaCO2岩層の生成要因を空間的に検討するための定期的な広域調査も共同研究者の協力を得つつ開始した。 研究2年目である今年度は、CaCO3岩層の生成機構の解明(課題①および②)のために、南インド・タミルナードゥ州に存在するCaCO3岩層地帯において、昨年度にあらかじめ準備しておいた圃場試験区において、CaCO3岩層の除去作業を行い、CaCO3岩層の有無が当該地域の土壌水分動態および作物生育に与える影響に関する圃場試験(作物の栽培試験を含む)を実施した。栽培期間中は複数回にわたって現地調査を実施し、土壌試料などの採取とともに、昨年度に設置した気象ステーションの保守管理を実施した。現在、得られた各種データの解析を実施している。 以上の定点調査に加え、現地共同研究者とともに、南インド・タミルナ-ドゥ州一体を網羅する形になるように、25地点において表層土壌50点、灌漑水25点を昨年度から継続して都合4回採取し、pHおよびECの測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に選定した圃場において、予定通りCaCO3岩層の有無が土壌水分動態および作物生育に与える影響について解析するための圃場試験を開始できており、現在までに必要な実験データの採取は順調に進んでいる。 また昨年度に実施できなかった現地農民への各種聞き取り調査を計画通り今年度に実施できた。加えて、計画していた広域25地点における土壌試料や灌漑水の採取も計画通りに実施でき、実験も現在までに順調に進んでいる。 以上のことから、(2)おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、CaCO3岩層の有無が土壌水分動態および作物生育に与える影響を解析するための圃場試験(2年目)を実施する。得られた2年分の土壌水分データおよび作物収量の結果から、課題①②に相当するCaCO3岩層の生成機構の解明とその農学的意義の解明を、それぞれ水分動態と生産性の観点から検討する。とともに、広域調査で得られた実験データを面的に解析することで、CaCO3岩層が当該地域においてどれくらい分布しているのかを検討するとともに、各地点での農業生産の持続性に関する聞き取り結果をもとに、CaCO3岩層の意義を面的に検討する。 加えて、得られた研究成果をそれぞれ取りまとめ、国内外の学会において発表するとともに、投稿論文のとりまとめと投稿を行う。
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