最新の栽培技術において,高品質・高収量生産を目指すには,光合成活性,蒸散量,病気予察など植物生理・生体情報の取得が不可欠である.しかしながら,植物生理情報の取得に関して一般の農家が利用できるような安価・簡易な装置は現状ない.また,光合成活性や蒸散量などそれぞれ単一の指標のみでは環境変化に対する植物応答を説明するのは難しく,複数の指標から総合的に説明付ける必要があるが,前述のように植物生理情報を総合的に把握する現場対応型のシステムは存在しない.そこで,複数の植物応答を総合的に評価できる指標を提案することで,栽培の高度化・効率化に資する指針提供やデータ収集におけるコスト面で大きなメリットが得られる. 本研究では,植物組織内および細胞内で発生する複数の植物応答を把握できるスペックル画像から,現象個別の特徴を分離・抽出し,新たな植物生理指標の創出を目指している.そのためには,未だ確立されていないスペックル変動の解析手法について,整理するとともに,より生理応答を捉えやすいスペックル解析手法を検討した.また,植物を対象としたレーザスペックルの場合,レーザ光の影響による植物応答が懸念される.そこで,レーザ光波長とスペックル変動の関係についても調査した. スペックル変動解析手法に関しては,いくつかの輝度値変動解析を実施し,また,レーザ照射の透過・反射の違いなども検討し,スペックル変動と植物生理応答との関係を明らかにした.また,植物体内でも大きな幾何学的散乱を生む葉緑体に注目し,レーザ光波長の違いによる葉緑体動態とスペックル変動の関係を明らかにした.
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