研究課題/領域番号 |
17K19310
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
清水 浩 京都大学, 農学研究科, 教授 (50206207)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 根圏低温処理 / 光ストレス / 光刺激 / 高付加価値 |
研究実績の概要 |
本研究では水耕栽培において養液温度を低温にすることにより植物の根圏にストレスを与える方法を採用し,植物工場の主要な生産品目であるリーフレタスを対象として,養液温度の制御により植物体に与える影響を調査し,作物の収量や栄養成分の増加を考慮した最適な栽培方法の指針となるものの提案を目的としている。2017年度は,グリーンウェーブ(Lactuca sativa L. cv. Greenwave)を対象として,赤・緑・青色光の比率が変更できるラインLEDを用いて,180μmol m-2 s-1の光強度のもとで,青色光と根圏低温処理を収穫前の1~5日に処理する実験を実施した。成分測定は,硝酸イオン,カリウムイオン,カルシウムイオン,糖度,アスコルビン酸,カロテノイドを測定した。 低温ストレスをリーフレタスに与えると生体重が減少し,アスコルビン酸含量が増加した.生体重は減少したものの,最小でも65 g程度であり,実際に付加価値のついたものとして流通しているリーフレタスと比較しても十分な生体重が確保できているといえる.また,青色光照射を併用することでさらにアスコルビン酸の含量が増加した.低温処理のみでは有意差の認められなかった区画でも有意な増加が観察され,青色光照射を利用することにより養液温度を下げるための電気エネルギーを削減できる.今後,より最適な組み合わせを検討することで,電力コストを削減しつつ高付加価値化を図った作物の生産が可能になることを示唆する結果が得られれ他。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物が抗酸化物質の生合成を促進するメカニズムは,まだ完全には解明されていないが,Orsiniら(2016)は,植物が生物的および非生物的なストレスを受けると活性酸素が発生し,これを消去するために分子的や生理学的メカニズムを含む一連の対抗メカニズム(抗酸化物質の生合成)を活性化させることを指摘している(図1)。この対抗メカニズムとしては,アスコルビン酸(ビタミンC),(ポリ)フェノール類,フラボノイド類およびトコフェロール(ビタミンE)などの抗酸化物質や,特異的な二次代謝産物(グルコシノレートなど)の関与した代謝経路を進化させることが明らかとなっている。研究初年度の2017年度は,低温ストレスと青色光刺激による実験を実施し,リーフレタス2種にるいては,これらの処理が効果的であることを示唆する結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
植物の対する刺激にはこれらの刺激意外に乾燥,水分欠乏,塩,低栄養,振動・接触による機械的刺激など多々ある。これらの刺激に対する反応を理論的に説明することはモデル植物では可能かもしれないが,実際に野菜として流通している多様な品目について,そのレスポンスの差を理論的に説明することは現段階では難しい。したがって,ある刺激が効果的な品種とそうでない品種が現れる可能性は非常に高いが,これら品種依存性などについては実験的に確認していく必要がある。2018年度以降は,これらの点について検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は硝酸イオン,カリウムイオン,カルシウムイオン,糖度,アスコルビン酸の分析を行う予定であったが,文献調査により,カロテノイドがストレス刺激の効果が現れやすいことが判明し,急遽カロテノイドを分析項目として追加した。 これにより,分析キットして比較的高価であるアスコルビン酸の分析回数が減ったため,約万円の残額が生じた。 これについては2018年度にアスコルビン酸の分析を実施して使用する予定である。
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